トロピカル墓場

好きなものは好きだからしょうがない!!

ラメステその後

tropical-haka.hatenablog.com

 ↑の感想ではラメステの劇中歌では「その瞳に」が好きと書いたけど、公演終了後に配信された劇中歌インスト集を聴いていたら、ライとコノエの「目醒め」「絆、呼応す」がどちらも変拍子(3/4・4/4・2/4拍子、5拍子)でかっこよくて好きになった。「その瞳に」は歌唱シーンというよりインストが流れていたシーン(ライがぐずぐずになっているところ)が好きだった。でも今「その瞳に」インスト聴いていたら泣けてきたからやっぱりこの曲のやさしさが好きだ。

 原作を進めていて、ラメステでGOODENDを観たからBADENDを優先的に回収している。今はライルートでリークスとの最終決戦が始まったところである。

 あらましを知っているとはいえ、指輪を取りに火楼に戻り、その姿にもう自分の故郷はなくなったのだとコノエが涙するシーンで本当に辛くなってしまい、少しプレイのペースが落ちていた。

 ネット上の自分と、この自分とはレイヤーが別の場所にあって、それをわざわざ重ねることは本当はしなくていいとわかっているし、ためらいもあるんだけど、ラメステを観た時からずっと自分を作品に重ねてしまってるところがあって、それはわたしが故郷喪失という感覚におぼえがあることだ。

 わたしは2011年の東日本大震災で避難生活を経験している。今は地元にも立ち入ることは可能になっていて家族も元気に生活しているし、避難生活も最初こそ転々としていたものの血縁者を頼ることができたし、文字通りの故郷喪失者というわけではまったくなくて、幸運なわたしがそれを自認することはおこがましくて、それによって見えなくされてしまう人がいることもわかっているけど、でもコノエにエンパシーをおぼえずにはいられなかった。

 もしかしたらこの苦しさは根本的には「帰ることができる場所がなくなった」という感覚とは関係ないもので、災害に対する長期的なストレスかもしれない。でもわたしにとっての観劇とはそのものが(人間のむきだしの感情をぶつけられるという)ストレス体験と(カタルシスなどによる)ケア行為だとドマステの時思ったし、共感がそもそも防衛機制かもしれないし……とりあえず自分をまだ蝕んでいる巨大なストレス要因とは関係がありそうだ。今年は1月1日から能登半島地震が起きて、そんな中でのラメステ上演。

 だからコノエにとってのライが・アサトが・バルドがコノエの居場所になるというストーリーに、わたしとコノエは違うことを突きつけられるような気持ちになる。どこまでも勝手だが……。

 好きな台詞発表ドラゴンが 好きな台詞を発表します

「どこだろうか。知らないところって言ったら、怖いかい? まるで、死後の世界について考える時のように」

春日武彦著『恐怖の正体 トラウマ・恐怖症からホラーまで』で「死を擬人化してみるならば、それは妙にフレンドリーで弁舌爽やかな詐欺師みたいな人物のような気がする。」*1と言われていたけど、それはまさにフラウドなのではないかと思う。

死はわたしたちの日常に遍在している。でも日々の生活でそれは壁紙の幾何学模様程度の意味しか備えていない。それなのに死はある日突然不可解さと臆面の無さの双方を携えて目の前に立ちはだかるのだ。*2

死後の世界について考える時、誰もがその永遠の前に立ち尽くしてしまう。死は唐突だ。そして誰もがいつか到達するのに絶対に手が届かないさまは翻って神秘的で、聖なる、 畏るもののようでもある。このたとえがぶっこまれる急さと詩的さが死のまとうイメージと重なって、フラウドの台詞はまさに死の擬人化みたいでときめいた。

 さっきまで災害のグリーフみたいなことを言っていたのにアレだけど、わたしはフィクションにおいて死が「あるもの」として描写される作品が好きだ。いくつか挙げると、

とかである。

 

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 ステンドグラスがLamentoっぽい店に行った。君沢ユウキさんがゲストのイベントに行ったのでラゼル。

*1:春日武彦『恐怖の正体 トラウマ・恐怖症からホラーまで』p.234、中央公論新社、2023年

*2:春日武彦『恐怖の正体 トラウマ・恐怖症からホラーまで』p.215、中央公論新社、2023年

絶望、その先の……

絶望、その先の楽園

絶望、その先の楽園

  • 最高に幸せな私たちの世界。
  • J-Pop
  • ¥204

無職も2ヶ月目になるとそれなりにのんのんとした生活ではいられなくなって、今日はかなり志望度が高かった企業からお祈りメールが来たのでダークサイドに陥りそうになるのを堪えて爆音で音楽を聴きながら高島鈴『布団の中から蜂起せよ』を開いた。

そして私は、あなたにマジで死んでほしくないと思っている。
(「序章」高島鈴『布団の中から蜂起せよ――アナーカ・フェミニズムのための断章』人文書院、2022年)

聴いているのは最近ブックオフで購入した「ミラクル☆トレイン大江戸線へようこそ~」のキャラクターソングで、「線路は走るよ6の字に」という曲が各キャラクターによってアレンジされているものだった。こういう定型があるものを繰り返し身体に馴染ませていると落ち着いてくる。

線路は走るよ6の字に~大江戸線へようこそ・新宿ver.~

線路は走るよ6の字に~大江戸線へようこそ・新宿ver.~

  • provided courtesy of iTunes

これは新宿バージョン。なんかダフト・パンクみたいである。

これは月島バージョン。和楽器にベースミュージックがプラスされていてめちゃくちゃかっこいい。

『みんな水の中』での記述を思い出して、それもまた開いてみる。

それと矛盾するようだが、私は爆音によっても癒される。〔…〕爆音で音楽を聴き、自分の感覚を飽和させることで、地獄行きのタイムマシンを食いとめるのだ。
(横道誠『みんな水の中――「発達障害自助グループの文学研究者はどんな世界に住んでいるか』医学書院、2021年)

地獄行きのタイムマシンとはこの本の中ではフラッシュバックのことで、それはわたしにも心当たりのあるシチュエーションであるが、今のわたしにとっての地獄行きのタイムマシンは、希死念慮にまつわるもろもろだ。

最近は衝動的な、まさしく地獄行きのタイムマシン(わたしは下り道を進むトロッコがイメージされる)さながらの気持ちは少なくなっていて、静かな悲しみをもってもろもろの気持ちになることが多かった。けれど今は違う。

「爆音で自分の感覚を飽和させて、コントロール不可能な働きを曖昧にする」……大丈夫になるまで音楽を聴き続ける。

今は「冬の日のエトランゼ」を聴いている。

そういえば『みんな水の中』では、こんな記述もある。

地獄行きのタイムマシンは、私に関わらない、また陰惨すぎることがない、しばしばユーモアあるいは上質な雰囲気を感じられるトラウマ的表現に触れたときに、すぐれて発動しにくくなる。

横道はエドガー・アラン・ポー怪奇小説を引いて、トラウマ的な描写に心がすっと軽くなるという。

これはもしかすると、わたしが鬱状態にあった時に「sweet pool」をプレイして生理的嫌悪を感じる血や内臓にフィーチャーしたテキストに救われた気持ちと同じような働きなのではないかと思った。

大丈夫になってきたのでこの日記も終わります。

獣愛ブースト音楽劇「Lamento -BEYOND THE VOID-」 #ラメステ 感想

猫耳ハプニングが起きてる
この世のどこかで
猫耳ハプニングが起きてる
あの世のどこかで

HAPPENING

HAPPENING

※舞台本編とは関係ありません

 

 原作ファンだったりプレイしたりして臨んだキラルステージ過去作とは異なり原作・俳優・スタッフのいずれにもファンや目当てとして該当しない状態で公演に行きました。スプステでキラステにBLと演劇の臨界的な想像力を見てしまったから、こうして品川ステラボールに来ている。

 キャスティングが今までのキラステからすると新鮮に感じて、というのも、雰囲気わかるー!というのもある一方、わかるかつ意外性を感じる、というのもあった。制作由来だったりするのだろうか……(キラステ、毎回制作が変わっている件)。個人的には自分が末満健一さんのファンをしているため、末満健一さんと仕事をしたことのある俳優さんたちがメインキャラを占めていることが嬉しかった。

 観る前からそういった信頼を感じて期待していた俳優さんたちは、演技の粒が揃っている感じがして観ていてストーリーにすごく没入することができた!自分は原作未プレイのため原作っぽいという反応はできないのだが、その上でなお「台詞を言っている」というより「そこにいる」を感じさせてすごかった。

 OPとEDが原作OPのアレンジというのがアツい!

 賛牙としての才能が目覚めた歌唱シーンによって、一人で生きていたコノエが作中世界(賛牙と闘牙という攻めとの最小で最大の関係、戦いによってリークスに挑んでいくというストーリー)および音楽劇というラメステの構造そのものと関係していき、作品が動き出していくのを、肌で、リアルタイムで感じていくという経験は何物にも代えがたいです。

 キラステ作品は、自分の心と身体を持ちながらも他者や自分の意思が介在しない現象によってコントロールされてしまう主人公が、「普通」から外れることで加害を受けながらも自己の「生」の在り方を選びとる話だと思っているのですが、ラメステにおいては攻め3人もそれをなぞりつつ、コノエと攻めキャラで自分を乗り越えて不自由かもしれなくても未来・光の方へ手を伸ばす、という不動で永遠なるテーマ性が強いと思いました。ここらへんの感想はED曲「光満つ祝福の歌」がすべて歌っているのですが……。(そういう意味でわかりやすい舞台だったとも思います)

 各ルートと各キャラクター・俳優さんの感想を続けます。

 

 各ルートの初日をそれぞれ観て、瀬戸祐介さん演じるバルドがすごい、ということをしみじみと感じていた。コノエというか、前嶋曜さんを受け止める力がすごい。

 初日を観劇して一番印象に残り、かつぐっときて、今でもずっと心に残っているのが最終決戦へ向かおうとしているコノエをバルドが抱きしめて引き留めようとするシーンだった。色々なことを諦めたふりをして、特に未練や執着というものから目を逸らして生きているバルドが、初めて何かを諦めたくない、コノエを離したくないという姿を見せるのがどうしようもなく人間くさくて大好きになった。抱きしめられながら「死にに行くんじゃない。乗り越えたいんだ」「死ぬためじゃないだろ。生きるためだろ」という、淡々とした中に固く強く響く決意を滲ませるコノエのトーンも胸にくる。出会ったばかりの頃(しっぽを梳かすシーン)の「ひねくれ者」を再び、キス、そして「俺はまだ……生きてる」から戦闘BGMと悪魔たちの台詞で緊張感が続き、戦闘服を着たバルドが登場するまで腰を抜かすくらいかっこいい。

 3ルート全体を通して思ったことは、途中で攻めと受けの権力勾配がめちゃくちゃになるのが好きということで、バルドルートでは、距離の縮め方が激しくておせっかいなオヤジのバルドのペースにコノエが巻き込まれていたのに、いつの間にかバルドがコノエを追いかけるようになっていたという構図がそれだと思った。

 色々なことを諦めているのらりくらりとしたさまを隠さないバルドにコノエが日々の生活の尊さを説くシーン、

「きっと、あんたと出会えてよかったって、思えるやつもいるだろうし」
「あんたもそう思うか」

この食い気味な「あんたもそう思うか」の真剣さに、「えっ」と顔を上げるコノエと同じくらい、ハッとさせられます。

 攻め3人は全員自分自身の闇を嫌っていますが、バルドの「嫌い」が一番ぐさりと刺さりました。瀬戸祐介さんの演技には「キャラクターの台詞」以上にこちらを刺してくる、人間の言葉の重みがある。その嫌っていた自分が求めて悪魔にもすがった「強さ」を唾棄する、力強さ。

 発情期シーンの「いいんだな?」とか「困ったガキだな」の言い方が、日によって吐息っぽく、色っぽくてよかった。あの片手間感というか、本気の気持ちを隠しつつ気怠いような大人っぽいセックスの匂いたつような表現力。

 これらの真摯な演技に加え、瀬戸祐介さんのアドリブ力によって毎公演日替わり要素が楽しみになっていました。本当に瀬戸祐介さんにかんしては舌を巻きっぱなしな日々でした……。応援していてすごく楽しそうな俳優さんだな~と思った!

 

  • アサトルート

 一番リップ音立ってた。

 アサトルートの攻めと受けの権力勾配がめちゃくちゃになる好きシーンは、「俺は、お前のものになりたい」です。

 突然だが、アサトルートを観て思い出したてらまっと氏のインタビュー記事を引用する。

てらまっと 近代人はみんな多かれ少なかれ故郷から追放されている故郷喪失者であり、終わりのないエグザイルの途上にあるんだ、みたいな話がよくあるわけですが、〔…〕自分が故郷を失っても、遠く離れた場所にいても誰も知っている人がいなくても、何度も聴いた音楽はいつだって口ずさむことができるんです。そうやって孤独な人間に最後まで寄り添い得るっていうのが、やっぱり音楽の良いところなんですよ。
(「インタビュー 日常系アニメ批評愛好家が聴くキャラソン」私的音楽同好会『声色 Vol.01 特集:キャラクターソング』2023年、p.45)

わたしは故郷喪失者としてのアサトとコノエにエンパシーを感じてしまった。リークスに言わせれば「傷の舐め合い」かもしれない、故郷を追われ、自分として生きる時間も、拠り所にしてきた父への憎しみも失われ、どうすればいいかわからなくなったアサトに、母からの愛が残されていることをコノエが伝え、そしてアサトが愛を返すこと。そんな彼らを繋ぐものが、アサトが母から聞かされた歌(作中に登場する「音楽」)とそれをアレンジした劇中歌「歩む道」(キャラクターの自己表現としての「音楽」)であるのが、音楽劇であるこの作品をメタ的に横断しながら音楽の意味を体現していて、とても好きだと思いました。

 

  • ライルート

 加藤将さんがCV森川智之のキャラを!?と思い、実際力んだ感じには少し慣れが必要だったのですが、激情型ライはとても癖になりました。

「お前、本当に馬鹿な猫だな。おまけに愚鈍だ」

 フラウドに付け込まれるのもそうですが、攻め3人の持つ闇の中で一番「病み」感があるのが好きで、悪夢に魘されたり狂気を引きずり出されそうになったりして荒い息をつくシーンでは笑顔に……。外見も態度も色々な意味での力も大きく、かつ、大きく見せているのがうまいのに、隙がある感じが(もしかしたら原作とは違う印象なのかもしれませんが)よい。

 2幕でコノエに忠告するバルドの「そのままの意味だー↑よ」とか、「気をつけろよ(ん)」みたいなゆる~い言い方が好きでした。

 アサトルートで初めて同士か確かめ合うのもそうでしたが、娼館で何もしていないことを強調して攻めの処女性?(童貞性?)を確認するのがあの頃のBL典型だ~と思いました。セックスシーンなどコノエと触れ合う時に手が大きくて体格差を感じてウオ~となった。

 ライルートでの攻めと受けの権力勾配がめちゃくちゃになる好きシーンは、コノエの手を左胸に導いて「ここを貫け」と伝えるシーン。弱さを見せるライと隣で踏ん張ろうとするコノエの感情が溢れまくった叫びのやり取り。リークスがコノエを乗っ取った状態でライにキスするシーンも大好きです!

 劇中歌では「その瞳に」が好きです。「歌……歌おうか?」のシークェンスが、ずるいけど好き……。ぐずぐずになりながら自分の強さの理由とその裏にある自己嫌悪を吐露するライを小さな身体で包み込むコノエ、ライの本当に弱弱しい「嫌じゃないのか?」、お互いが嫌っている身体へ優しく自分を残そうとする行為という怒涛の流れが美しい。

 狂気に囚われたライを呼ぶコノエの「ライ!」が本当に痛切で好きです……。

 

  • 各キャラクター・俳優さんについて

 カガリは本当にかっこよかった!BL表象における女性が好きなので、吉良らしい頑なさと鋭さと強さを言葉の端々から滲ませる発声が大好きです。淺場万矢さんが兼ね役で演じるマナも、勝気なトーンと「あらぁ~ん?♡」な、しなを作った感じがめちゃくちゃよかったです。

 トキノはコノエと額を合わせたりお尻で小突きあう仕草がいちいちかわいくて登場するとシリアスな展開の中の癒しになっていました。また、大千秋楽の深澤大河さんの「コノエの旅が無事に終わり、幸せになりました」という挨拶がすごく好きでした。気持ちは終わってほしくないけど、舞台は終わりがあるから美しい。

 キルとウルは、特にウルの不気味さが好き!!!でした。キルの戦闘準備中に見せるガラの悪そうな雰囲気と、ねっとりとした品のある(?)ウルの同じなようで違う表情も見せるコントラストが好き。また、戦闘シーンでこの曲がかかるタイミングがめちゃめちゃ気持ちよかった。

賛牙と闘牙

賛牙と闘牙

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 悪魔、マジで最高!!!元々原作のビジュアルが別ベクトルで最高なんですけど、あのビジュアルが三次元化して、芝居がかった身振りをつけて低音で歌うOPから虜でした。

 ラゼルは声がいい……!低音でよく通る声をしているので誘惑する「感じるか?」も、コノエが提案を受け入れた後の「よっしゃあ」もデカく、他の悪魔たちが各ルートで見せた活躍に相当するものがなくともラゼルの存在は常に強く感じていました。そして稽古場生配信や他の俳優さんたちのお話から出てくる君沢ユウキさんの(いいエピソードによる)存在感がすごく、君沢ユウキさん、いや、君沢ユウキおにいさまと呼びたくなるような気持ちに。(萌え妹しか許されない呼び方のため、NO)

毎回いい声で「アップロードしてくれよな!」と言っていて、そういう(官公庁とかの)キャラみたいで面白かった。

 カルツも声がいい……!わたしがフィクションで最も好きなシチュエーション、"「生きろ」と託す"もしてくれた。そしてラメステで一番ぞくぞくしてたまらなくなるシーンが、カルツの台詞にあります。

「雪か」
「確かに、そろそろ降りそうだ」

二つの月の歌の歌詞を解くシーンで、この台詞に次いでMが入ってくるのが、糸を張ったような、光線がパァーッと進んでいくような、そんな心地よい推進力を感じてたまらなくなります。

 フラウドは、一番人間っぽくなくてパキパキでかっこいい。村松洸希さんの体格、すごすぎ……!?あのビジュアルで「猫ちゃん♡」「つれないなァ♡」という語尾に♡な感じのトーンなのがたまらなく胡散臭くて最高だし、ライとの関係に萌えてしまった。フラウドENDがめちゃめちゃ気になっている……。

 ヴェルグはまずビジュアルへの寄せ方は一番すごい!ご本人も身体づくりをしたというお話を色々なところでされていて( #悪魔筋トレ部)、都度本当にありがとうございましたとなる。普段のチャラついた喋り方とバルドを誘惑するモノローグ「苦しいだろ?疲れただろ?こっちへ来い。楽になるぞ……」の落ち着いた色っぽいトーンのギャップがすごく好き。また、岩田知樹さんが振り返りラジオでお話されていたことが、自分が原作のある舞台に面白さを感じて観劇をしている理由とまったく重なってドデカ感情になってしまった。

 舞台を観て最初にすごい!と思った演技はフィリだった。くるくる変わる道化の表情と声のトーンとするりとした身のこなしをスムースにこなすきたつとむさんの演技、歌うシーンで仰け反りながらする絶叫がものすごくてずっと感心していた。キラステはサブキャラの演技がしっかりと演劇のにおいをまとっているところが好きで、きたつとむさんは今回その筆頭でした。個人的に少しガサッとした声がものすごく好みです……!

 リークスを演じる松井勇歩さんは、わたしが演劇作品で一番と言っていいほど好きな「羽生蓮太郎」の主演を務めていらして、「羽生蓮太郎」ないし劇団Patch作品での泥くささを今でも見ようとしてしまうんですけど、翻って2.5次元作品ではロイヤルな役も演じていらっしゃって、未だそのギャップに悶えているという個人的な思い入れを持った方です。今回も「またロイヤルの系譜……!」と悶えることになったのですが、一言ひとことの重み、フードを脱いで「虚ろな器」を歌う堂々たる姿、そして思いを吐露するラストのカタルシス、本当によかった。リークスは登場や攻撃の映像演出との噛み合いが見ていて気持ちよかった。

 歌うたい・シュイは、ずっとコノエの旅を見守っていることと狂言回しの役が合致していてよかった。ていうか、キラル作品(キラステになった作品)って傍観者ポジのキャラがいがち……?コノエが賛牙の才能に目覚めたシーンなど、説明台詞ながらそのイヤさをあまり感じさせない絶妙な感情を込めた節回しでよかった。クライマックス、客席まで光が届いて、コノエを導くシュイのシーンはいつも鳥肌が立ちます。

「目を閉じて、光を感じなさい。光を見失ってはいけない!」

 そしてコノエは、キラステ主人公然としていてかっこよくてかわいくて強かった。キラステ恒例ですが、ステージの上で転がされまくりながら台詞を言うのがすごい。正直毎公演安定感を感じたかというとそうではないのですが、そのフレッシュさでキラル作品へ果敢に挑んでいく感じが世界の主人公っぽい。リークスと相対した時の「嘘だ!」の絶望や攻めへの戸惑いのニュアンスと、コノエなりの正義を貫く時のコントラストはすごく鮮烈で心に焼き付いて離れない。

 

 スペシャルカテコは、最初詳細が出た時「Lamentoをファンサ舞台に…!?💢」みたいな気持ちがあったのですが、シリアスな本編から怒涛のハッピーエンドへ、からのいい息抜きになっていてよかったと思いました。加藤将さんの冷やかしの声がデカすぎる。

 原作のテキスト(地の文)をそのまま台詞とするのではなく、演劇の力と観客を信じて取捨選択・表現してほしいという気持ちは、正直、相変わらずでしたが、音楽という要素が加わってキラステの集大成的にアップデートが重ねられたよい舞台作品だったと思っています!演劇LOVE!

2月の音楽

 2月によく聴いた音楽です。同じ曲(ほぼ猫を堕ろすといとうかなこ)を繰り返し聴いてるだけの月でしたが一応……。

 

 

Fling Posse & 麻天狼「FIGHTER'S ROAD」

FIGHTER'S ROAD

FIGHTER'S ROAD

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 アニメ「ヒプノシスマイク Rhyme Anima+」の劇中歌です。

 西遊記をモチーフにした回に登場する、チャイナ風味+ラップの曲。オリエンタルな楽器がふんだんに使われている中スクラッチ音が入ってくるイントロと寂雷先生の「ハッ」に掴まれます。

 サビのメロディへの言葉の乗せ方が、フレーズの区切り通りにハマっている時とずらされている時があって、聴いていてくせになります。

  • くらえ/Flow/苦悩と/修行/東/西/そしてまた/東へ/FIGHTER'S ROAD
  • ことだ/まに/宿るたま/しいのた/び/切り/開く道/の先へ/FIGHTER'S ROAD

「戦うほど光る道」という歌詞が好きです。

 楽曲提供をしているのは同じくヒプノシスマイクの「Nausa de Zuiqu」や「drops」、カリスマの「めちゃめちゃカリスマ」などを手がけているCHI-MEYさんです。多才……。

 

土岐隼一「Treasure」

Treasure

Treasure

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 声優の土岐隼一さんの曲です。

 オケヒが連発するのですがなぜかダサくならずフューチャーな雰囲気があります。たっぷりとしたリズムの中にちょっとJersey clubっぽい音が入っていたりして、こういうサウンド土岐隼一さんがご自身の名義で歌うのって新感覚な感じがします。

 

いとうかなこ「Lamento」

Lamento

Lamento

 ゲーム「Lamento -BEYOND THE VOID」のOP曲です。観劇していた舞台『獣愛ブースト音楽劇「Lamento -BEYOND THE VOID」』の劇中歌がこの曲をアレンジしたものになっていたのでよく聴いていました。

 ケルティックなVGMという感じなのですが、静謐なイントロに入ってくるドラムの音が割れてるのがかっこいいです。

 舞台バージョンでは悪魔が歌唱するパートが好きです。舞台ではこの曲が流れている間だけ撮影とSNS投稿が可能な時間が設けられていて俳優さんたちが割と好き勝手にしていておもしろかったです。

 

ASTROPHYSICS「Little Dimises」


www.youtube.com

 リオデジャネイロ拠点のアーティスト・ASTROPHYSICSの曲です。

 浮遊感のあるリバーブがかけられたシューゲイザー的なギターサウンドとボーカル、ドラムンベースのビート。ブラジルのストリートを映すモノクロの実写映像のMVが素晴らしいです。Spotify CanvasSpotifyの再生画面のバックに流れるショート動画)でこの映像の上にキャラクターっぽい線が乗るのが更に好きです。

 ASTROPHYSICSは2022年にアルバムと合わせてビジュアルノベルゲームを発表していたりと、音楽以外の表現で包括的に音楽を発信しているところが好きです。

 

猫を堕ろす『ポップの神髄』

コミュニス (feat. 鮭とばSKTB)

コミュニス (feat. 鮭とばSKTB)

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 バンド・猫を堕ろすのアルバムです。

 本当に全部が好きなのですが……、ex.鮭とばSKTB(Yurei Landscape)さんとの「コミュニス」は本当にウオ~~~!!!となりました。BPMの速さと鋭いリズムに期待が高まってドキドキしている中アーメンが入ってきてもう身体全体が叫んでる!暴れてる!って感じになります。

 アルバムアレンジされた「漫画の世界で」も好きです。本当に全部が好き……。

 

 2月によく聴いた音楽でした。

🐈

2月16日から『獣愛ブースト音楽劇「Lamento -BEYOND THE VOID-」』を観劇している。

18禁BLゲーム「Lamento -BEYOND THE VOID-」を原作とする舞台で、ゲームブランド・ニトロキラルの舞台化シリーズの3(再演を別作品としてカウントするなら4)作目だ。

わたしは同ブランドのゲーム「sweet pool」が好きで、2022年に舞台化されたものを観劇して以降この「キラルステージ」シリーズの観劇を続けている。

このシリーズの特徴として挙げられるのは、攻略対象のキャラ(いわゆるルート)ごとの内容を日替わりで上演することだろう。「ラメステ」初日は瀬戸祐介さん演じるバルドのルートだった。

今回の自分は原作・俳優・スタッフのいずれにもファンや目当てとして該当しない状態で公演に来ていた。わたしはキラルステージのファンなのだ。

あくまで私的な好みとして、キラルステージがいい舞台であると断言することには少しためらいをおぼえる。シリーズを一貫して特に、かなり気になるのは脚本だ。原作がノベルゲームであるならそのテキストを具現することこそ舞台化であると思うのだが、キラルステージはいわゆる地の文を主人公や狂言回しのキャラクターがそのまま喋っていることが多い。

たとえばライに出会った時にコノエがライの容姿や心を奪われたことを口にするけど、実際に舞台上に登場しているのだから容姿は見ればわかるし、心を奪われた演技をすればそれでいいと思う。

ボリュームのある内容を試行錯誤した結果なのだと気持ちを汲むことはできるが、さらに被害者意識じみた言葉を続けるなら演劇の力を信じていないように感じて少し残念だ。

そう、わたしは、演劇というものが好きなのだ。

パンデミックの渦中においても演劇が大好きで、だから「世間」とのずれを起こしてどうしようもなくなってしまった。

そんな時に自分を救ってくれたのがゲーム「sweet pool」と音楽朗読劇「黑世界 ~リリーの永遠記憶探訪記、或いは、終わりなき繭期にまつわる寥々たる考察について~」だった。

どのように自分を「救った」(安易な表現だ)のかは今まで断片的に話したことがあるのでここでは向き合うことを避けるが、わたしはそれらの作品たちによって自分を獲得しなおした。

そして2022年に「sweet pool」の舞台化である『本能バースト演劇「sweet pool」』を観た。その時にBLと演劇の臨界的な想像力が見えたから、色々言ったけどわたしはキラルステージに行くのだと今は思う。

BL×実写であれば、今はドラマの方がさまざまに制作されているのだろう。でも演劇が好きなのだ。フィクションと生きた人間のせめぎ合いを全身で感じることが好きだ。

 

uamiさんの「ハートのしるし」という曲をコノエっぽいとなんとなく思い出していた。

ただしいことよ、苦しいことと
そうわかってるよ 
そうわかっても尚
簡単には消えない
この脳裏押しつけられたtatto
火付けに来ただけなの?
「良かったらどう?」捕まらないで!
色、かたちどう見てもheartみたい
悪い支配の呪文、呪文

 

自分のスプステの感想を見返していたら、

自分の心と身体を持ちながらも他者や自分の意思が介在しない現象によってコントロールされてしまう人間が、「普通」から外れることで加害を受けながらも自己の「生」の在り方を選びとる話

と書いていて広く見れば今回もテーマとしては近しいかもしれないと思った。

tropical-haka.hatenablog.com

ラメステの感想は改めて言葉にする時間を作りたい。ドマフラも……。

ところでキラステの公演では近くの席の人やランダムグッズの取引で会った人など初対面の人とのハートフルなイベントが起こりまくっていて、竹内佐千子『2DK』みたいなことが起こってるんだが……と新鮮に感動している。キラルヌクモリティ……。

稼いで稼いで稼ぎまくる

 会社を退職した。清々しいほどの無職である。

 入社初日に教えられたことが上司のコーヒーの好みとか出すタイミングとかで、D&I宣言とか出してるのになんなんだと卒倒しそうになって、頭の中で「コーヒーくらい自分で淹れろよ」(おにぎりくらい自分で握れよ)と『古書店街の橋姫』の川瀬になっていた。

↑これ

退職理由に繋がったことは本当にたくさんあったけど、こういう社会の中で生きていかなければならないのが残念ながら現実なんだろうと頑張っていたら頑張れなくなってしまった。

稼いで稼いで稼ぎまくる
サボってる奴らはすぐに捲る
稼いで稼いで稼ぎまくる
MIC1本かますmiracle
稼いで稼いで稼ぎまくる
それで世の中を変えてみせる
稼いで稼いで稼ぎまくる
Haffi make money make money memba mi tell you

Money!Money!Money!

Money!Money!Money!

  • 豹堂杢児 & 宝来清麿
  • レゲエ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 この曲を聴くといつも連想するものがあって、それはimoutoidサイプレス上野とロベルト吉野の曲をeditしたやつだ。


www.youtube.com

原曲の「明日は我が身な罠に嵌らない為にもしないぜ神頼み」がチョップドされて「神頼み」部分を延々とループしているやつで、チープに繰り返されることで意味がアイロニーに逆転している感じを、「Money!Money!Money!」でも連想してしまう。

(ちなみに「しない神頼み」というパンチラインヒプノシスマイクのサ上とロ吉プロデュースの碧棺左馬刻のソロ曲でも登場する)

ラップとアイロニーといえば、霊臨も「ヒプマイは横浜しか勝たんかった」とラップしていましたしね(?)

linkco.re

 

(ここで夕飯を食べたので前後の内容がメチャクチャになっている)

 

soundcloud.com

 #IncestBoyzのクルー・forevermoreが、SoundCloudのプロフィールに小説投稿サイトの自作小説のリンクを貼っていて、「自分もこういうふうに生きていきたいよな」と強く思った。生活と、創作と、そして政治は不可分なのだ。

 わたしは2022年の9月からJ.GARDENという一次創作BLの同人誌即売会にサークル参加していて、18禁のものを頒布したりしているのでゾーニングとしてTwitterのアカウントを別にしているのだが、元職場での就業が始まったあたりから同人活動に体力を割くことができなくなってアカウントを持て余し気味になっていた。そんな中でのイーロン・マスクの最悪っぷりもあってTwitterそのものからも気持ちが離れていって、イベントの開催ペースにもついていけなくなり、次回のJ.GARDENサークル参加を見送っていた。同人誌即売会そのものは好きで5月の文学フリマに一般参加しようと考えていたところ、出店側で参加すればお得(?)なのでは?と思い、今回退職して時間ができたこともあり文フリへの出店を検討していた。同人活動はタイミング。

 やっとTwitterの話に戻る。なので、持て余し気味になっていた同人活動用アカウントの運用について考えていた。生活と創作と政治は不可分なのでアカウントを分けて運用するということが苦手で、ほぼ告知にしか使用していないのだが、そのことがなんだか落ち着かない。極端な性格をしている自覚はあるが管理しきれていないという感覚に一度陥ると気になってしょうがないのだ。

 生活と創作と政治は不可分という思い。今のTwitterの限界、SNSの限界。色々考えて、作るか 「個人サイト」(ナガノ構文)になった。(次回 無職が独自ドメイン取得……!?)……まあどうなるのかわかりませんが、これからはてなブログでは個人サイトづくりをするオタク・ドキュメントを発信していくかもしれません。

#私のオススメSideM楽曲10選

 この記事はアイドルマスターSideMのファン企画「私のオススメSideM楽曲10選」に参加したものです。

 企画概要はこちら。素敵な企画ありがとうございます!

note.com

 

はじめに

 2022年のサブスク解禁時ですら約450曲(+配信されない曲)あったSideMの楽曲から10曲を選び、その理由を言葉にするというのはかなり苦しかったのですが、「音楽の数だけ出会いがある!」(企画概要より)を信じ、選びました。で、やっぱり自分の作品やアイドルへの思い入れにも触れることになるので最初に自分語りをします。

  • 2011年放送のアニメ『THE IDOLM@STER』でアイマスシリーズとJupiterを好きになる
  • 冬美旬担当(2014~)、天峰秀担当(2021~)
  • (Pとしての感情とかファンとしての感情とか色々書いていたけど消しました)(でもきっと理解されると思うので痕跡だけは残します)
  • 作品を問わず、キャラクターソング、またそれについての語りに関心がある

 以降もバンバン自分語りが登場します。拙いですが、どうぞ!

 

High×Joker「HIGH JUMP NO LIMIT」

THE IDOLM@STER SideM ST@RTING LINE 04 High×Joker

作詞:結城アイラ、作曲:光増ハジメ、編曲:EFFY

2015.7.22

HIGH JUMP NO LIMIT

HIGH JUMP NO LIMIT

  • provided courtesy of iTunes

 歌詞がとか曲調がとか、そういうことを飛び越えて(もちろん歌詞にも曲にも言いたいことや好きなところはたくさんある)、いつだってはじまりの気持ちを思い出させてくれる曲なんだよな。

 High×Jokerって、こんなに楽しい音楽を歌ってたんだ。

 High×Jokerって、こんなにまぶしい音楽を歌ってたんだ。

 High×Jokerって、こんなにワクワクする音楽を歌ってたんだ。

 ゲームの中で応援していた5人が、音楽の中でめいっぱいきらきらに生きていて、それがなにより嬉しくて、言葉が追いつかなくなる。そうやっていつもわたしの先に5人が走ってて、追いかけていくみたいな曲。

 

Legenders「String of Fate

THE IDOLM@STER SideM ST@RTING LINE 15 Legenders』

作詞:松井洋平、作曲:原田篤Arte Refact)、編曲:脇眞富(Arte Refact

2016.10.26

String of Fate

String of Fate

  • Legenders
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 新アイドル発掘オーディションで3人が選ばれ、Legendersとしてデビューし、ボイスが実装され楽曲が出る――という約半年間のリアルタイムコンテンツ的な動きとそのスピード感に、当時どのように感じていたのかはもうあいまいなのですが(古論クリスさんに投票したことは覚えている)、この曲のサビ、3人のユニゾンがめちゃくちゃ好きで、めちゃくちゃに衝撃を受けた(し、受け続けている)ことはとても鮮明です。吐息多めの低音・なめらかな中音、癖のある高音のバランス。

 この曲はバッキングの左右の音の振り方が最高にかっこよくて、この仄暗いようなクールな8ビートにいつでも酔っている。Cメロから続く期待感が満ちたところでの落ちサビのアレンジ!痺れます。

 

Jupiter、W「カレイドTOURHYTHM」

THE IDOLM@STER SideM 2nd ANNIVERSARY DISC 03』

作詞:真崎エリカ、作曲:徳田光希、編曲:中土智博

2016.10.5

カレイド TOURHYTHM

カレイド TOURHYTHM

  • Jupiter & W
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 『STA@TING LINE』では、いわゆるポップなアイドルソングというより、キャラクターソング色が強かったと思っています。パブリックというよりプライベートな曲。なので、「MOON NIGHTのせいにして」をはじめとするANNIVERSARYシリーズは異色というイメージと衝撃がずっとあります。

 tourismとrhythmをかけた造語のタイトルの期待から始まる、体に響いてくる低音のリズム、名前コール、ギターのデジタルなエレクトロディスコファンク。タイトルや歌詞に登場するカレイドスコープ=万華鏡のようにめくるめくハッピーな音たちに体が踊ってしまうし、それを受け入れてくれる曲!

踊るしかない そうだろ?

そして落ちサビに大好きな歌詞があります。

Rainbow Music

ほんの1フレーズだけど、このフレーズを聴くともうぶるぶると震えてしまうくらい胸が多幸感でいっぱいになって、祈ってしまいます。音楽って本当に何色にもなれるし、それこそ虹色で、キラキラしている。それをJupiterとWという大好きなアイドルたちが伝えてくれる。視覚的なイメージの色と聴覚的なイメージの音楽というハッとする組み合わせが、こんなにぐっとくるのがすごい。

 

DRAMATIC STARS、Beit「冬の日のエトランゼ」

アイドルマスターSideM』第1巻 ボーカルCD「315 St@rry Collaboration 01 〜DRAMATIC STARS & Beit〜」

作詞:真崎エリカ、作曲・編曲:遠藤直弥

2017.12.27

 ANNIVERSARYシリーズが異色に感じたという話をしましたが、ANNIVERSARYシリーズでもやはりアイドル=encourageする存在というイメージはずっと前提であり、前向きな曲が多い気がしています。なので、「冬の日のエトランゼ」は衝撃を受けました(さっきから衝撃を受けた曲の話しかしていませんが、そうでもしないと10曲だけなんて選べない)。

 センチメンタルなピアノのリフに鋭いリズムが印象的、その他雪のひとひらを思わせるきらきらしたサウンドに、切なげなアイドルたちの歌声。こんなSideMの曲聴いたことない!と、ものすごくわくわくさせられました。

君はいつもと同じように歩いてゆく
僕は追いつけなくて 背中 離れてゆく
そして違う昨日を生きていたってことを
思い出す 悴む 冬の日

 いつもわたしはアイドルたちの背中を追っている気持ちでSideMに接しているのですが、そんな彼らが「僕は追いつけなくて」って歌う、っていう。代弁者としてのアイドルというラブソングはそれこそ「MOON NIGHTのせいにして」で経験しているけど、こんなにも胸が締めつけられる。一瞬だけきんと冷たくなってすぐ溶けてしまう儚い雪の中に、確かに温度とかやさしさも感じられて、そのクオリティの高さは、なにか巨大なものが体を通り抜けていったかのようなくらいの衝撃でした。

 

FRAME、もふもふえん、F-LAGS「Compass Gripper!!!」

THE IDOLM@STER SideM 3rd ANNIVERSARY DISC 02』

作詞:真崎エリカ、作曲・編曲:中土智博

2018.2.14

Compass Gripper!!!

Compass Gripper!!!

  • FRAME, もふもふえん & F-LAGS
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 ANNIVERSARYシリーズからばかり選曲してしまっていますが、本当に大好きなのです。この曲は衝撃というよりシンプルに大好き!な曲。土曜朝アニメ的な曲調×この3ユニット、ありそうでなかったけどあったらすごく嬉しい!

 Jupiter同様、わたしは秋月涼さんのこともSideM以前から知っていたので、担当とかファンとはまた違うような感情をF-LAGSに持っていて、徳武竜也さんのこともありこの曲が出た当時のことが本当にかけがえないものだと強く感じるようになった。そういう私的すぎる思い入れがいっぱいあって、でもそれを抜きにしても大好きなところがいっぱいある。

ココロ呼吸するように 夢を求めていいんだよ
例えば僕たちは "未来を君と見たい"

深呼吸したら胸にいっぱいさわやかな空気が入ってきて、思いっきり駆け出したくなるようなフレッシュさと、いつだってこちらを置いて行かないように、「同じ」であるように手を差し伸べて視線をくれるようなハートウォーミングな曲。「(分からない)」とか「(貫くよ)」のもふもふえんの台詞っぽいコーラスがかわいい。

どこに行きたい? 何が見たい? 体験したい?
一つ一つ現実に変えて行くから!

 ちょっと言葉選びが難しい話ですが、この歌詞みたいなエネルギーが2018年の当時のSideMにも自分にも世間にもあって、もちろん今のSideMが最新で大好きですけれど、時勢のムードみたいなものとも合っていた気がして本当に眩しいです。でも、いつだって隣にいてくれる曲なことはどんな時に聴いても変わらなくて、それが音楽の力、この3ユニットの力、アイドルの力そしてSideMの力だと思います。

 

彩、神速一魂、THE 虎牙道「笑顔の祭りにゃ、福来る」

THE IDOLM@STER SideM 3rd ANNIVERSARY DISC 03』

作詞:結城アイラ、作曲:本多友紀Arte Refact)、編曲:山本恭平(Arte Refact

2018.3.21

笑顔の祭りにゃ、福来る

笑顔の祭りにゃ、福来る

  • 彩, 神速一魂 & THE 虎牙道
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 大好き!!!ANNIVERSARYシリーズの合同曲は、ユニットのキャラクターが曲調にめいっぱいに表現されているのに「ありそうでなかった」感もあることが魅力だと思っています。

 とにかく大好き!がいっぱいの曲。

  1. この曲の清澄九郎さんの歌声が大好き。他キャラがこぶしやビブラートやそもそもの声の癖などで表現力のバリエーションがすごい(それも好き)のに、清澄九郎さんの声が負けておらず、とても楽しそうに聴こえて嬉しくなる。
  2. とにかくハッピーで口ずさみたくなる歌詞。「(K・O!)」や「(Oi!)」など、ユニットらしい合いの手が楽しい!「(Smile! Smile! One More Smile!)」→再度笑む(SideM)……ってコト!?
  3. 4thライブの思い出。声優さんが全員揃って、歌詞通りお揃いの法被で最高のパフォーマンスをしてくれて、合いの手をコールできて盛り上がって、シャボン玉とライブのテーマカラーのメタリックな紙吹雪が色とりどりにステージを彩って、もう夢みたいな大団円だった。

 わたしはライブの参加歴が4th(2019年)→7th(2022年)と間が空いていて(といっても6thだけともいえるけど)、つまり2020年(のパンデミック)を経て自分の中で色々な分断が起こり、もちろん多くの人がそうだっただろうけど、特にライフステージの変化と重なってしまったこともあってひどく落ち込んでいた。だから、その前の一番楽しかった記憶というSideMおよび4thライブは、今のわたしにとっては少し眩しくて、手の届かないところにあるように感じてしまう。でも「Compass Gripper!!!」とも重なるけれど、楽曲はいつもそばにあって、大好きな気持ちを思い出させてくれます。

 

W、Café Parade、もふもふえん「ミュージアムジカ」

THE IDOLM@STER SideM 5th ANNIVERSARY DISC 03 W&Café Parade&もふもふえん』

作詞:真崎エリカ、作曲・編曲:本田光史郎

2020.2.19

ミュージアムジカ

ミュージアムジカ

  • W, Café Parade & もふもふえん
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 この曲はCDを購入した直後よりも、もっと後に聴いて、何度も何度も救われた曲です。現在進行形で救われている。

 2020年から始まったCOVID-19によるパンデミックに影響を受けなかった人なんていなくて、この曲を語るにはその痛みを書かなければならない。当時のわたしは個人的なライフステージの変化と、自分が大好きなライブや舞台などの状況、またそれらの「現場」に対する価値観そのものが大きく変化したこと、そして「死」を(今まで見えていなかっただけとはいえ)意識しなければならない、田舎に住んでいるわたしの生活の・世界中の変化についていけなくなって、とても生き延びることができないでいた。その時に聴いていたかというと好きなコンテンツにも食指が伸びないでいたのでそういうわけでもなく、ただここで言いたかったのは、自分がひどくdepressiveな状態にあったということだ。

 わたしがやっと「ミュージアムジカ」に出会ったのは、2020年11月23日にNHK-FMで放送されたラジオ『今日は一日"アイマス"三昧』で、「元気の出るアイマス曲」としてリクエストされたのを聴いた時でした。「カワイく 雄々しく ハイになれぇ〜」という歌詞がとてもSideMらしい、というような紹介だったと記憶している。そしてCDを持っていることを思い出して聴いた。

キミは太陽 あらため 名を呼ぶひと
パッと晴れてくんなきゃ たまんないよ
感受性のハプニング "ズキ"より"スキ"にしてみませんかぁ

陽気なビートが底抜けに明るく体に響いて、そのサウンドのスピード感に最初はついていけませんでしたが、サビのこの歌詞がスッと胸に入ってきた。

キミは太陽 あらため 名を呼ぶひと
パッと晴れてくんなきゃ ボクらは…

で、わざわざ書くのもアレなんですけど、泣きました。今でも、今聴いても泣きます。

 サビ以外もこちらを励まそうと興に乗ってハッピーになって浮かれて、でもちゃんとこちらを向いていてくれる、そういう歌詞がとても素敵なんですけど、やっぱりサビが好きです。アイドルは名前を呼ぶ人がいてくれるからアイドルでいられるという、ある種の弱さを打ち明けてくれていながらも、聴く人をencourageするものになっている。その「名を呼ぶひと」はプロデューサーであるかもしれないし、その作品ファンの呼称「プロデューサー」にだって何通りもの人がいるし、あるいは……と、聴くたびに新しい感動があったり、毎回同じことに安心したりする。

 この曲を聴いてdepressiveな状態からもう一度前へ進んだというのは、SideMの職業や社会的立場を手放したり諦めたりしたところからアイドルを目指すというテーマとも通ずるような気がしています。

 

C.FIRST「Not Alone」

THE IDOLM@STER SideM GROWING SIGN@L 02 C.FIRST』

作詞:Kanata Okajima、作曲:本多友紀Arte Refact)、編曲:河合泰志(Arte Refact

2021.12.8

Not Alone

Not Alone

  • C.FIRST
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 「Not Alone」を初めて聴いた時からもう一度SideMのファン人生が始まったと思っているくらいぶっ刺さった曲です。

 前述したように、自分は2020年以前/以後の自分に分断を感じていました。でも、だからC.FIRSTを好きになったのかもしれない。C.FIRSTおよび彼らが追加ユニットとして登場した『GROWING STARS』サービス開始の2021年は、パンデミックやステイホームの概念によって孤独や先の見えない現在というものがわたしたちの生活にいっそう深く根を下ろした時期だと思っています。その内向的な同時代性が前提としてありながら、未来や未知へ進むさまが歌詞に表現されているのが「Not Alone」の好きなところです。

離ればなれが 当たり前へと
変わった時代で
偽りばかり 上手くなるけど
見せてよ 本当のキミを

キミとなら 乗り越えられるかも

この断言できない「かも」が、めちゃくちゃに好き。

 歌詞と同じくらい衝撃を受けたのは、ボコーダーでエフェクトをかけられた声が全体的に重ねられていることです。ボコーダーとは声を楽器音として演奏することができるエフェクターで、サビ終わりの「どんなに遠くたって 僕ら走り切るストーリー」の重ねがわかりやすいです。

 そもそもキャラクターソングというものは、声優がキャラクターとして歌唱することで初めて成立し、同時に完結します。その時歌声はキャラクターの命そのものです。音楽全体をみると、近年、声を加工すること=「生」の表現を殺すこと、ではなく、新たな感性を開拓する手法であるという感覚がデフォルトになってきています。その感覚が声=命なキャラクターソングにも見つけることができたと感じた作品のひとつに「Not Alone」があると解釈しています。

 SideM内外の自分の関心に強くぶっ刺さった「Not Alone」が大好きです。あと、落ちサビの天峰秀さんの「Not Alone」、声、かわいすぎる。と思って気になったのが担当になったきっかけだから好きです。

 

Café Parade「Teatime Cliché」

THE IDOLM@STER SideM GROWING SIGN@L 04 Café Parade」

作詞:松井洋平、作曲:丸山真由子、編曲:TOMISIRO

Teatime Cliché

Teatime Cliché

  • Café Parade
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 2020年以前/以後の自分に分断を感じていた、と言ってきたけど、ここでまた自分が変化します。SideMと出会う前のわたしには、いわゆる渋谷系と呼ばれる音楽ジャンルに耽溺していた時期があり、そして、「Teatime Cliché」はまさに渋谷系の楽曲なのです。SideMとは関係のないところにあった音楽が好きな自分と、大好きなSideMにつながりが感じられる曲がリリースされたことに、めちゃくちゃ嬉しくなりました。自分が人生の中で見つけてきた「好き」が集まっているのが「Teatime Cliché」です。

 「渋谷系」と「Teatime Cliché」の関係については以前もブログ記事を書いたのでよければ見ていただけたら嬉しいです。

tropical-haka.hatenablog.com

『GLOWING SIGN@L』シリーズから、SideMはアニソンにとどまらないジャンルへ接続されうる音楽性を持った楽曲を出してきていると思っているし、そのエポックメイキングがこの曲だと思っています。

 

伊瀬谷四季「ハイパービリーバー!!」

THE IDOLM@STER SideM 49 ELEMENTS -01 High×Joker

作詞:新谷風太、作曲・編曲:矢野達也

2022.7.20

Hyper Believer!!

Hyper Believer!!

  • 伊瀬谷四季 (CV.野上 翔)
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 担当のソロも大好きなんですが、選曲していた時に自然と浮かんだのがこの曲でした。この曲は歌詞の全部が好きで引用が止まらないけど、

百万回の挫折と感動とキラめきが
オレを待っている
カラダ中を
震わせて 叫びたいから

やっぱりサビが大好きです。

 冬美旬さん担当なりにHigh×Jokerをずっと追いかけていて、伊瀬谷四季さんの存在は特別で大好きです。この曲は少しだけ心のやわらかいところに触れて、でも芯を持ってまっすぐで、雑誌で見てきた彼のイメージと結びつくような感じがします。

 大好きなのでいろいろと言葉が出てくるかと思ったけど、やっぱりこの曲を聴いた時の気持ちはスケッチできなくて、だから音楽や歌があるんだと思います。音楽の力、歌の力を確かめさせてくれるからたまらない気持ちになるのかもしれません。

 それと、ライブでいつも野上翔さんが見せてくれる景色が大好きです。8thライブで聴けてよかった。

 

おわりに

 以上の10曲が、わたしのオススメ10選です。これ以上なにか続けると、あの曲やあの曲についても語りたくなってしまうので……やめます!SideMはどの曲も本当に大好きですし、これからも出会い続けていきたいです。

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