つんく♂の歌詞があまりにも高みにのぼりすぎている、EDMは少し食傷気味に感じていた、というきわめて個人的な理由からきわめて個人的に、最近のモーニング娘。の楽曲にはあまりピンと来ていませんでした。
しかしながら「That's J-POP」を通して聞くと、新曲に対しても既存のシングル曲に対しても腑に落ちるような瞬間があった感じがします。自分なりのモーニング娘。'21像が確立できたように思えたアルバムのレビューです。
1. 愛してナンが悪い！？
1曲目にして個人的にかなり大本命な曲です。いきなり道場破りのように登場する「ジュージュージュジュっと裏返せ 深夜焼肉デイト」という歌詞がすごい。肉を！？という衝撃を3秒くらいの間に体験するし、「紙コップでいいじゃない」的な「らしい」カジュアルさを感じる。畳みかけるように擬音を多用した歌詞が続くので「リズムを意識するモード」みたいな姿勢が整い、一気に曲の世界に引き込まれます。ラップパートで一度鳴りを潜め、サビで思いっきり弾ける感じが気持ちいい。バックトラックがかなりかっこよく、サビの「道なき未知の道」から「さあ」に繋がる流れがたまらない。全体的に緊張感が漂っています。
2. ギューされたいだけなのに
これぞ！な曲。15期良いパートもらってるな～。つんく♂さんが書く近年の歌詞は「承認欲求」がキーワードになっている気がするのですがこれもそのエッセンスが存分に感じられると思いました。「街の真ん中 泣いたろか」とか、逆に曖昧な「そういうもんね こういうもんね」とか、行き場のない言葉が心中で巡っているような感じがあるのが人間くさくて良い。
3. 信じるしか！（生田衣梨奈、石田亜佑美、小田さくら、加賀楓、森戸知沙希、岡村ほまれ）
ものすごいゴリゴリな曲。つんく♂曲にあるこの「神妙さ」みたいなの、何なんでしょうね……。展開が予想できなくてすごい。
つい言い訳してしまったり割り切れなかったりする自分についての歌詞からノータイムで「なぜに争うんだろう 奪うんだろう 歴史が語る 人の性」と人類規模になるのは流石。「最強のカワイイ私」とのことだったので生田さんにボーカルでもっと良い意味で悪目立ちしてほしかったな～……！
4. TIME IS MONEY!（佐藤優樹、野中美希、横山玲奈、山﨑愛生）
また難易度がものすごい曲。野中美希さんの声がかっこいい！ちぇるのコーラスが入るだけで英語詞がぐっとかっこよく聞こえます。ボーカルに迫力があるしメンバーそれぞれの声がよく聞こえる。やっぱり「すったもんだ」とか「火の車」とオッ……って二度見してしまう感じのワードがあるのが、何度も繰り返し聞きたくなるポイントだと思っています。
5. 泣き虫My Dream
M1～4では力強さの中にフックになるようなワードがあって良いと思っているのですが、M5、6は歌詞がストレートでぐっとくる。コンサートの最後の方で聞いたら絶対泣いちゃうきれいなバラード。
6. 二人はアベコベ（譜久村聖、牧野真莉愛、羽賀朱音、北川莉央）
かわいい！曲調ががらっと変わって、この曲も他のゴリゴリなダンス・ミュージックも映える感じがする。幸せすぎて涙が出そうになるようなかわいい歌詞のラブソングで、力強さは控えめだけど本当に良い曲。
7. 純情エビデンス
冒頭に「つんく♂の歌詞があまりにも高みにのぼりすぎている」と書きましたがおおよそこの曲の初見の印象がそれでした。メロディはかなりキャッチーなのでそのギャップもあり……。しかしまず一般化させて解釈を試みようとするのではなく、モーニング娘。の曲だとストレートに受容するだけで良かったのだと、つんく♂さんのセルフライナーノーツを読んで理解。とはいえ歌詞を理解できるかどうかに左右されたりする曲ではないのですが……（オタクはいつでも出来るだけつんく♂さんの御心を知っていたくて……）「生意気でしょ」の歌い方が生意気。
8.このまま！
楽しい曲だ～！コンサートで思いのままに叫んだらめちゃくちゃ気持ちいい曲。エネルギッシュなのでタイトル「このまま！」はこのままどこへでも行こう、的なやつなのかと思ったら「時間よ！このまま 止まれ」というフレーズが繰り返し出てきたのでオッ……となりました。面白い。
9.KOKORO&KARADA
今のモーニング娘。にとっての「時空を超え 宇宙を超え」のような曲なのかな～という第一印象でした。切なさと尊さと開放感のようなものが同時に存在している。陰影とそれに対する光を感じる、キミが自由になるほどボクの影が際立つようなイメージです（黒子テツヤなの？）
ギターのカッティングやストリングス、ピアノが万華鏡のように展開されるバックトラック、まっすぐな「君が好きさ」に聞き入る。時代や性別を超越したような神秘性をたたえた曲。
10.人生Blues
怪作。曲を構成するパートが全部違いすぎるのに成立していて、つんく♂さんもアレンジャーの大久保薫氏に「アホやん！」と言っていてウケてしまった。Aメロでブツブツ言ってるやつ、何？と思ったら歌詞の母音部分だけのパートが存在していて、重ねることでボーカルをパーカッシブにしたかったらしい（すごすぎ）サビでいきなり歌謡曲になるし、とにかくとんでもない曲なので何回も聞きたくなる。
11.Hey! Unfair Baby
骨太なバンドサウンドがアルバムの中で引き立つ！爽やかさと男前ロックな雰囲気があって聞いていて気持ちいい。
12.恋愛Destiny～本音を論じたい～
ハロヲタじゃないオタクに聞かせたいモーニング娘。の楽曲1位な曲。どことなくアニソンみたいな雰囲気がある！好き～！落ちサビの「留まらない」の切れ味が良くて、小田さくらさんこんな歌い方もできるの！？と衝撃でした。あとこのリリックビデオの映像がかなり好きです……。
13.LOVEペディア
同じメロディーを歌詞・アレンジ・ダンス・パート割りを変えて2つの曲にした企画。15期の声がたくさん聞こえる～！山﨑愛生ちゃんの声が本当に良い。
そしてMVがかなり好きです。メンバーのキャラが立っているし小ネタが多くて見ていて楽しい。
14.人間関係No Way Way
15期のかわいさとフレッシュさがフィーチャーされた「LOVEぺディア」と比較すると、先輩メンバーの声が光る曲。冒頭からちぇるの「どうしたらいい」、加賀楓さんの「伝わらない」などクール！特にかえでぃの「伝わらない」のスタッカートが効いてる感じがとても好きです。最近ダンスだけでなく歌唱面でもかえでぃが目立つようになってきましたね！
かなりファンクなので雰囲気ががらっと変わる。つんく♂曲より個人の声が目立つような気がします。
15.青春Night
グルーヴィでポジティブさ全開なこの曲がラストに来ると金曜日の夜みたいな感じで良いですね（？）バックトラックもコーラスもめちゃめちゃ厚くてちょっとびっくりした。森戸知沙希さんのハスキーな声がフィーチャーされていてかっこいい。
そしてMVにとても好きなポイントがあり……、3:17くらいのラップパートのえりぽんです！わちゃわちゃするメンバーの中をモーゼのように割ってカメラのド真ん前に現れる姿が美しすぎます。
ゴリゴリのEDMが多いので聞き疲れするかな～と思ったのですが、始まりと全く違うイメージで終わるので（赤羽橋ファンクな〆なので安心感（？）もあり……）ループしてしまうスルメなアルバムでした。
That's J-POPなアイドル・モーニング娘。'21に対してまだまだアップデートができていないオタクですが、「愛はあんだよ！」です！
