トロピカル墓場

好きなものは好きだからしょうがない!!

マイベスト音声作品2023 DLsiteがるまに編

 2023年に聴いたDLsiteがるまにの同人音声作品の年間ベストです。以降の文章にはR-18作品へのリンクが含まれますのでご注意ください。

 

 

千乃美月の粘膜催眠《先輩の壊し方編》 

サークル:紅差し、シナリオ:藤崎、声優:初時チェリー

※成人向け作品

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彼氏と同棲するために引っ越してきた街で、大学時代の後輩・千乃美月と数年ぶりに再会した。彼氏と喧嘩をして家に居づらかったヒロインは、心理カウンセラーをしている美月が休日に行っているボランティア活動を手伝うようになった、そんなとある休日の話。

 病み/闇の要素が好きなので、サークル・紅差しさんの過去作品(『何でもない優しい朝に君と甘いものを食べて、生産性のないセックスをして、それから一緒に死んでほしい』というシューゲイザーバンドの曲名みたいな作品など)にはかなり惹かれるものがあったのですが、閉鎖病棟の介助をテーマにした作品とか、刺し違える(?)勢いで聴く覚悟が必要だと思っていてなかなか聴けていなかったところ、今回は年下攻めということ、声優さんモクもあり始めて購入しました。

 め~っちゃよかった。まず、約35分という短さでサクッと聴けるのがとてもいいです。ストーリーが丁寧な作品ではこのくらいの長さがずっと集中力を保てるので、関係性モクで聴くにはとてもよかったです。演技モクでも満足できました。それに聴き返したくなったらすぐ聴き返せるのがとてもいい。

 音声作品の効果音は、どうしても声に対して二次的な役割を持ちますが、催眠をかけるシーンでは声に対して対称的な役割になっていたのが面白かったです。部屋のシーンでベートーヴェンの『月光』が流れていたのもよかった。作中でクラシックが流れる音声作品は名作。*1

 初時チェリーさんの、やわらかなトーンが終始大好きでした。余裕がなくなってくると舌足らずになる感じがカワイイです。

 わたしは、非常に言葉選びが難しいのですが、外見や性格はいわゆる「男性らしさ」から外れているけど行為に関して暴力性を発揮する、結局はトキシックな男性性を原動力にしているような、もちろんフィクションとしての家父長制の被害者の病んだ攻めキャラが好きで、おっとりしているピンク髪の(ピンク髪の攻めですよ!きゃあ!)美月がヒロインにぐちゃぐちゃに執着しながらセックスしてるのがめちゃくちゃ萌えでした。「今日も、いっぱい、イケましたね……♡いいこ、いいこ……♡」っていう台詞とか、エッチなお姉さんっぽさもあり、後輩⇔エッチなお姉さん、おだやか⇔雄みたいな、そのねじれにねじれた倒錯感がめちゃくちゃ刺さったし、大好きです!!!

 最初は刺し違える(?)覚悟を抱いていましたが、とてもよかったので紅差しさんの他作品もこれからチェックしていこうと思います!

 

代理婚-君と僕の幸せな結婚生活- 

サークル:バイオレットボーン、シナリオ:葵早希、斉藤しおん、声優:三重奏

※成人向け作品

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ヒロインと義弟の四宮清史郎は、戦死した夫の死により代理で婚姻関係を結ぶことになる。体が弱く社会に馴染めなかったことから卑屈な清史郎は、ヒロインと過ごすことで少しずつ考え方が変わっていく。
戦時中の日本を舞台にした作品。

 ふたなり攻めなど、女性優位作品が多いバイオレットボーンさんの作品です。病弱攻め!時代は病弱攻めですよ!このサークルは体調を崩した彼を看病する(嘔吐音声あり!)『病弱彼氏とおうちデート』など非実在病弱青少年をよく作品に登場させているのですが、成人向け作品では初だったのでワクワクして購入しました。

 トラック02、03、04がセックスシーンで、初夜から始まるのですが、どもりがちでぎこちなくてめちゃくちゃいい。クリちんぽとかザコまんことか言ってる場合じゃないですよ、このミニマルさが今の時代、大事ですよ!!!トラック02では行為中に咳き込まなかったので咳き込んでくれ……!と願っていたらトラック03では冒頭から行為中に咳き込んでいたので天を仰ぎました。ありがとう……。しかし咳き込んだことから、清史郎は苦しい内心を吐露するようになります。病弱なため徴兵されることもなく、家で妻を満足させることもできない自分が嫌だと言います。

「僕一人だけ、世界で孤立しているかのようで……寂しいよ……辛いよ……苦しいんだよ……!」
「ねえ。これを聞いたら、多分、君はすごい怒ると思うけど……聞いて、いいかい?」
「ごめんね。その……君は、兄さんと、したの?」

ここが、めちゃくちゃ、萌え。ヒロインと過ごすことで、むしろ清史郎は兄の姿をどうしても探して自分と比較を繰り返してしまうんですね。これに怒ってヒロイン優位パートが始まるのですが、ここでも「このこと、死んだ兄さんに知られたら……!」って言っており、萌え(さっきから清史郎→兄に萌えてない?)。

「手を、手を繋いで……離さないで……犯して……!世間のこととか、男らしいとか、そんなの吹っ飛ぶくらいに犯して、僕を……!」

この台詞、作品の舞台設定を考えるとめちゃくちゃインモラルです。この後もまた咳き込む。

「病気のことなんて忘れていたい……(咳き込み)、お願い……!」
「今は……何もかも、忘れたい……!君と、この世界で、二人だけ……今は、苦しいこと全部忘れられるから……君のことだけで、頭をいっぱいにしていたい……!」

 個人的に三重奏さんの声はきれいめな松岡禎丞さん系だと思っているのですが、そのたおやかな声が白い喉とか肋骨が浮いた胸とかを想像させるようで、前述の心情を吐露するシーンでは痛々しく繊細で、設定にとても合った官能的な演技をすると思いました。

 トラック04は完全にヒロイン優位後の行為なのですが、「ひどい~」とか「悪魔だ……」とかコミカルっぽいというか、生命力を感じさせる(?)清史郎になっておりかわいかった。ヒロインに対して「兄さんにも渡さない」「僕だけのお嫁さん」「僕の世界には君だけがいればいいと思えた」と言うようになっており、ヒロインとの営みによって兄・ヒロインへの気持ちに変化が表れていることがわかります。その後はドラマパートっぽいやり取りになるのですが、そこで反戦を掲げていてよかった。

 期待以上のところと期待の方が上回ったところがそれぞれありましたが、作品に漂う死のにおい、「弱さ」、病弱攻めを題材にしているところは本当に唯一無二でよかったです。あと義姉さん呼び、萌え。

 

マッチング・アプリPakoru~ヤンキーな幼馴染がお姉ちゃんと呼んできます~

サークル:white mist、シナリオ:こみあ、声優:乃木悠星

※成人向け作品

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幼馴染の吉沢春樹とヒロインは両片想い状態。高校デビューした春樹と距離ができたことに悩んでいたヒロインは、ある日春樹が友達に勧められてマッチングアプリに登録しているのを知る。春樹が知らない女の子と会ってしまうことを恐れて同じマッチングアプリに登録したヒロイン。ホテルにやってきた春樹と理由を隠して話していると、「分かってる?このアプリ、こーいうことするためのヤツだって」と押し倒してきて──。

 サークル・white mistさんのマッチングアプリをテーマにしたシリーズの最新作です。

 乃木悠星さんが年下や今作のような年下に準ずるキャラを演じるということは彼の声質的に多いのですが、

  • ツンデレや照れ隠しとも取れるような粗暴すぎないが乱暴な口調
  • ヒロインへの片想いをこじらせている
  • 「お姉ちゃん」呼び
  • 見た目はヤンキーで悪い友達とつるんでいるが、本当は結構真面目
  • 病み/闇の要素(ヤンデレ

というギャップ萌えかつ自分の年下攻め萌えにバチバチに当てはまるキャラ設定だったため、マジで萌えだな~とすぐ惹かれました。作品紹介の「わからせヤミオチ甘々えっち」という一文が、景気が良くて好きです。

 序盤の必死さ(必死なのは、いいこと)と、中盤の調子に乗ってるクソガキみ、後半の弱さを見せてすがってる感じ、という様々な年下っぽさが聴けてお得。

 病み/闇の要素という点では、ヒロインとの行為を春樹本人が一番拒みながらも暴走を止められない、自分で自分の片想いを最悪な形で終わらせながらも気持ちよくなってしまう、という「彼」側の1人BSS的な傷つきの描写が強い点が、一般的なヤンデレ作品と一線を画すと感じています。

 終盤、春樹がヒロインの気持ちを確かめようとするのですが、ヒロインが頑なに「好き」と言わない(本心なのに)ところにややついていけないのが気になりましたが、おおむね萌えです。

 このサークルの「手軽に恋する短編企画シリーズ」はすべて乃木悠星さんが参加しているのですが、男の娘攻めや年下攻めが充実していて、自分が好きな攻めキャラの微妙なニュアンスをもカバーされていると感じて注目しています。好きな声優さんが出演していても設定やシナリオまでドンピシャという作品にはなかなか巡り会えないことが多いので、嬉しいです。

 

寝取らりるれろ〜心がきもちよくなる本気の口説かれえっち〜

サークル:エネルジコ、シナリオ:兎山もなか、声優:八神仙

※成人向け作品

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NTR趣味の夫に懇願され根負けしたヒロインは、大学時代の友人・伊南匡輝を家に呼び出す。「夫のためにセックスしてほしい」という頼みを聞き入れた匡輝は、だんだんと本気でヒロインを口説いてきて──。

 サークル・エネルジコさんのデビュー作品です。八神仙さんを初めて聴いた作品でした。たぶん自分の中では他の八神仙さん作品もこれを超えることはないと思っていて、なぜならサムネのキャラデザと演技が合いすぎているから。大学時代にヒロインに振られているという関係とヘラヘラした口調と八神仙さんの声とこの長髪のビジュアルがめちゃくちゃ合っている。とにかくサムネイルのキャラデザが好きです。

 八神仙さん、シンプルにいい声で……。軽口を叩きながらさくっと行為を進めつつ、だんだん真剣さと男性的な欲望を見せてくるギャップがよかったです。ヒロインの抵抗する台詞や喘ぎを笑い混じりで復唱してからかう描写とか、抵抗感を感じる人もいるのではないかとちょっと心配するレベルでリアルな生っぽい演技でした。「復讐だよ、復讐」のところとか、張りついた笑顔が声に乗ってて好きです。

 ラストは「安心安全の(?)ラブラブNTR」というコピーにふさわしい展開で、シンプルなギミックだけど一本取られた気分になりました。お見事。

 

ゆきのひ

サークル:white mist、シナリオ:加納安、声優:三橋渡

※成人向け作品

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彼氏である都遊木颯太の家に泊まった翌朝、思いがけない積雪で街の交通はマヒし、どこにも行けなくなってしまう。2人はベランダに積もった雪を触り、手が冷えたら触れ合い、雪が溶けるまでの刹那の時間を過ごす。
雪がとけるまで。
おしまいの時間がくるまで。
のんびりと、ふたりで過ごす、静かで甘い半日間。

 雪を手の中で固めた時のぎぎっとなる感じ、冷えた空気が呼吸で身体の中に入ってくる感覚、窓のサッシがからからと立てる音、そういう「生活」の音があります。『彼と一緒にいる時の空気感』にとことんこだわったということで、三橋渡さんの演技もナチュラル。

 成人向け同人音声といえば、台詞・効果音・演技がどんどん過激に、マキシマリズム的に発達していきます。DLsiteがるまにの「乙女向け同人 ボイス・ASMR」のランキングを見ていると「執着攻め」の人気を感じ、その過激さは想いの強さに結びつけられているように思えます。ちょっと言葉選びが難しい話ですが、ポルノのトレンドって=シスヘテロ男性主体由来なのでデフォルトでミソジニックな目線が入っていることが往々にしてあり、それを受けたキャラクターがドSとか執着とかってラベリングされていて、執着=ヒロインを想う気持ちの強さだからこれも愛っていうつくりになっており、そのミソジニーが正当化されて内包されている感じが100%フィクションとして楽しもうとしても気になってしまうことがあります。

 この作品にはそういった過剰さはありません。キャラクターとヒロインの関係の強さは、高クオリティなサウンド技術によって表現されています。血の通ったキャラクターの精神的・肉体的な結びつきの強さの表現はつまり、ヒロインとの関係も対称的であるということで、そういった成人向け音声作品と出会えたことは、個人的にスウェーデンのポルノ監督・Erika Lustが実践するフェミニスト・ポルノのことを思い出したりしました。

 また、『ゆきのひ』を一番好きになったもうひとつの理由は購入特典で読めるようになる「真あらすじ」です。サークルさんからネタバレしないよう注意書きされているのでネタバレできませんが、Especiaの「くるかな」とか猫 シ Corp. & t e l e p a t h テレパシー能力者の「Building a Better World」とか相対性理論の「シンクロニシティーン」が好きな人は好きなのではと思います(まったく音楽的な何かがあるわけではないのですが、雰囲気として……)。

 

【Dom/sub】いい子だね、神田くん。ド底辺Dom(19)×エリート童貞Sub(28) ~Dom 本郷海斗 編~

サークル:PACIFIER、シナリオ:夏八木瑠一、声優:癒屋シズヤ

※成人向け作品

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Dom/Sub専用クラブでDom役として働く本郷海斗は、金も家もない超ド底辺。
ある日、路地装で若者に絡まれていた男を助ける。 神田と名乗るその男はSub性の持ち主で、コマンドをもらわないと危険な状態だったため、ホテルへ連れて行くこととなる。
Dom/Subの抗えない本能が2人のプレイを加速させていく──。

 2022年発売作品ですが、2023年に聴いたしめちゃくちゃ好きだったので選びました。DLsiteがるまにで販売されている音声作品は、リスナー=作品の一人称の視点が女性の作品がほとんどですが、この作品はリスナー=作品の一人称の視点が男性キャラクターのBL作品です。

 わたしはシチュエーション音声を聴く時、多くが作品を見守る「神の視点」になるのですが、作品の一人称の立場にあるキャラクターについてボンヤリと男性キャラクターだったらな〜みたいに考えて聴くことがあります。『いい子だね、神田くん。』は胸を張ってその楽しみ方ができる作品です。

 そういう防衛機制的な態度をとってまで(異性愛ものの)シチュエーション音声を聴くのは、「攻め」をやってる非実在青少年へのあこがれ(?)というか、なりて〜って気持ちと萌えがあるからです。ポルノでは女性的役割=「受け」側が客体化されるのがデフォルトですが、わたしはとにかく「攻め」を客体化したいので、「攻め」がエロく描写されるシチュエーション音声が好きなのです。

 海斗が好き。繰り返しますがわたしは年下攻め萌えです。そして何より好きだったのは癒屋シズヤさんの声です!葉山翔太さん系のギザギザしたような声がものすごく好きなのですが、この作品の癒屋シズヤさんはまさにそれでした。「!」となって他作品も聴いてみましたが、ここまでカワイイ系のトーンの攻め作品はなかなかなく……なので本当に、貴重。

 ドラマパートというか、セックスに関すること以外(Dom/Subユニバースは海外のBLファンフィクション発祥の特殊設定で、色々な用語が登場する)の台詞も好きで(好きな声なので、そうですね)、色々な攻め喘ぎも楽しめて最高でした!!!特にプレイボーイっぽく行為に酔ったようなトーン、終始くすくす笑いながら興奮する感じと、神田くんの耳元に流し込むように囁く声と、体位をバックに変えた後の低めで唸るような喘ぎ声がエロくて好きです。

 余談なのですが、インボイス制度施行時に一番考えていたのが「癒屋シズヤさんに絶対廃業してほしくない……」でした。インボイス制度反対!

 

 2024年もいい音声作品といい声に出会えるようにやっていこうと思います。