トロピカル墓場

好きなものは好きだからしょうがない!!

百合にまつわる自動思考の果て

 原宿さんのツイートを見て、わたしは2020年のサンシャイン劇場の椅子から立ち上がれていない気がしてきた。

 音楽朗読劇『黑世界 ~リリーの永遠記憶探訪記、或いは、終わりなき繭期にまつわる寥々たる考察について~』は、2020年9~10月に上演されていた舞台作品だ。わたしが好きな劇作家・末満健一さんのライフワークである「TRUMPシリーズ」のひとつで、2014年に上演された『演劇女子部ミュージカル LILIUM -リリウム 少女純潔歌劇-』の続編だった。

 2020年はあらゆる公演が中止になっていた時期で、TRUMPシリーズもそうだった。本来は別なミュージカルが発表される予定が、望むべき形での上演が不可能であることから延期、COVID-19流行下でも実現できる別の新作というのが『黑世界』だった。「代替」からスタートしているものの、今思うとかなりチャレンジングというか、もし公演がうまくいっていなかったらライブエンタメそのものに絶望する人間がいた作品だったと思う。少なくともわたしはそうだった。

 まず、『黑世界』はヴァイオリン・ヴィオラ・チェロの生演奏+音楽劇をベースにした朗読劇(ミュージカルパートがあるが、それ以外は朗読劇なので俳優は基本的に台本を手に持ち、立ち位置でソーシャルディスタンスが保たれている)というスタイルだった。普通に、豪華。そして主演が鞘師里保さんだった。鞘師里保さんはモーニング娘。所属時に前述のLILIUMで主人公を演じていた。『黑世界』は彼女の芸能活動再開が発表されてから最初の仕事だったので俳優ファン的にも作品ファン的にも激アツである。いや、激アツすぐると言った方がいいかもしれない。


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 マジでこの時期、ライブエンタメの状況について半ば諦めていたし、インターネットは最悪だし、人生もギリギリという感じだったので、そんな中上演されるこの作品はとても希望に思えたし、TRUMPシリーズはハードなストーリーだけど命を肯定する瞬間がきっと描かれている……とヤバいくらい色々なものを託しすぎている状態で観劇した。観劇の後はアイデンティティを取り戻せた気がする。でも、まだ椅子から立ち上がれていない自分をそのまま劇場に置いてきてしまったかもしれないと思って、思い出をこうしてブログに残しています。

 上演から3年近く経つ作品について今更考えているのは、『LILIUM -リリウム 新約少女純潔歌劇-』を4月に観たからです。前述した2014年に上演されたミュージカルを出演者のフルオーディション+加筆した脚本で再演したもの。


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で、ここからはマジで勝手なのだが、わたしは2月からずっとLily Furyの『ANTHOLOGY』を聴いていて、それはもうずっと聴いていて大好きなので、好きなものと好きなものを勝手に関連づけてしまう。さながら自動思考のように。具体的には末満さんに(大槻ケンヂの小説や音楽を舞台にしていたこともあるので)「Choral "Weiße Lilien für meine Liebste"」~「International Lily White (Part B)」を戯曲化してくれないかなとか……!

というか『黑世界』もちょっと大槻ケンヂの悪趣味さがあるんですよね(関係無)。不死身の少女へ人体実験を行っていた施設の男が、花を見て涙する少女の姿に心を打たれて彼女を解放するというストーリーがあります。鞘師里保さんは大槻ケンヂの『ステーシーズ』の舞台でロメロ再殺部隊に「許してあげるよ」と伝える少女・モモを演じていて、スプラッタな筆致でぐちゃぐちゃに殺されるさまとか、神のような存在がいるとしたらその存在にすべてを与えられてしまうところとか、少し似ている。松岡充さんが演じる施設の男も橘高文彦みたいなビジュアルだし……(関係無)。ゴキロウチさんも(も!?)『キラキラと輝くもの』が好きだと仰っていたので……(関係無)。

 末満さん、冬に舞台『鬼滅の刃遊郭編も控えておりめちゃめちゃ国民的な人になっていますが、また下野紘さんのコンセプトアルバムに関わったりしてほしいですいや、どうか健康に生きてください!