トロピカル墓場

好きなものは好きだからしょうがない!!

マイベスト音声作品2023 DLsiteがるまに編

 2023年に聴いたDLsiteがるまにの同人音声作品の年間ベストです。以降の文章にはR-18作品へのリンクが含まれますのでご注意ください。

 

 

千乃美月の粘膜催眠《先輩の壊し方編》 

サークル:紅差し、シナリオ:藤崎、声優:初時チェリー

※成人向け作品

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彼氏と同棲するために引っ越してきた街で、大学時代の後輩・千乃美月と数年ぶりに再会した。彼氏と喧嘩をして家に居づらかったヒロインは、心理カウンセラーをしている美月が休日に行っているボランティア活動を手伝うようになった、そんなとある休日の話。

 病み/闇の要素が好きなので、サークル・紅差しさんの過去作品(『何でもない優しい朝に君と甘いものを食べて、生産性のないセックスをして、それから一緒に死んでほしい』というシューゲイザーバンドの曲名みたいな作品など)にはかなり惹かれるものがあったのですが、閉鎖病棟の介助をテーマにした作品とか、刺し違える(?)勢いで聴く覚悟が必要だと思っていてなかなか聴けていなかったところ、今回は年下攻めということ、声優さんモクもあり始めて購入しました。

 め~っちゃよかった。まず、約35分という短さでサクッと聴けるのがとてもいいです。ストーリーが丁寧な作品ではこのくらいの長さがずっと集中力を保てるので、関係性モクで聴くにはとてもよかったです。演技モクでも満足できました。それに聴き返したくなったらすぐ聴き返せるのがとてもいい。

 音声作品の効果音は、どうしても声に対して二次的な役割を持ちますが、催眠をかけるシーンでは声に対して対称的な役割になっていたのが面白かったです。部屋のシーンでベートーヴェンの『月光』が流れていたのもよかった。作中でクラシックが流れる音声作品は名作。*1

 初時チェリーさんの、やわらかなトーンが終始大好きでした。余裕がなくなってくると舌足らずになる感じがカワイイです。

 わたしは、非常に言葉選びが難しいのですが、外見や性格はいわゆる「男性らしさ」から外れているけど行為に関して暴力性を発揮する、結局はトキシックな男性性を原動力にしているような、もちろんフィクションとしての家父長制の被害者の病んだ攻めキャラが好きで、おっとりしているピンク髪の(ピンク髪の攻めですよ!きゃあ!)美月がヒロインにぐちゃぐちゃに執着しながらセックスしてるのがめちゃくちゃ萌えでした。「今日も、いっぱい、イケましたね……♡いいこ、いいこ……♡」っていう台詞とか、エッチなお姉さんっぽさもあり、後輩⇔エッチなお姉さん、おだやか⇔雄みたいな、そのねじれにねじれた倒錯感がめちゃくちゃ刺さったし、大好きです!!!

 最初は刺し違える(?)覚悟を抱いていましたが、とてもよかったので紅差しさんの他作品もこれからチェックしていこうと思います!

 

代理婚-君と僕の幸せな結婚生活- 

サークル:バイオレットボーン、シナリオ:葵早希、斉藤しおん、声優:三重奏

※成人向け作品

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ヒロインと義弟の四宮清史郎は、戦死した夫の死により代理で婚姻関係を結ぶことになる。体が弱く社会に馴染めなかったことから卑屈な清史郎は、ヒロインと過ごすことで少しずつ考え方が変わっていく。
戦時中の日本を舞台にした作品。

 ふたなり攻めなど、女性優位作品が多いバイオレットボーンさんの作品です。病弱攻め!時代は病弱攻めですよ!このサークルは体調を崩した彼を看病する(嘔吐音声あり!)『病弱彼氏とおうちデート』など非実在病弱青少年をよく作品に登場させているのですが、成人向け作品では初だったのでワクワクして購入しました。

 トラック02、03、04がセックスシーンで、初夜から始まるのですが、どもりがちでぎこちなくてめちゃくちゃいい。クリちんぽとかザコまんことか言ってる場合じゃないですよ、このミニマルさが今の時代、大事ですよ!!!トラック02では行為中に咳き込まなかったので咳き込んでくれ……!と願っていたらトラック03では冒頭から行為中に咳き込んでいたので天を仰ぎました。ありがとう……。しかし咳き込んだことから、清史郎は苦しい内心を吐露するようになります。病弱なため徴兵されることもなく、家で妻を満足させることもできない自分が嫌だと言います。

「僕一人だけ、世界で孤立しているかのようで……寂しいよ……辛いよ……苦しいんだよ……!」
「ねえ。これを聞いたら、多分、君はすごい怒ると思うけど……聞いて、いいかい?」
「ごめんね。その……君は、兄さんと、したの?」

ここが、めちゃくちゃ、萌え。ヒロインと過ごすことで、むしろ清史郎は兄の姿をどうしても探して自分と比較を繰り返してしまうんですね。これに怒ってヒロイン優位パートが始まるのですが、ここでも「このこと、死んだ兄さんに知られたら……!」って言っており、萌え(さっきから清史郎→兄に萌えてない?)。

「手を、手を繋いで……離さないで……犯して……!世間のこととか、男らしいとか、そんなの吹っ飛ぶくらいに犯して、僕を……!」

この台詞、作品の舞台設定を考えるとめちゃくちゃインモラルです。この後もまた咳き込む。

「病気のことなんて忘れていたい……(咳き込み)、お願い……!」
「今は……何もかも、忘れたい……!君と、この世界で、二人だけ……今は、苦しいこと全部忘れられるから……君のことだけで、頭をいっぱいにしていたい……!」

 個人的に三重奏さんの声はきれいめな松岡禎丞さん系だと思っているのですが、そのたおやかな声が白い喉とか肋骨が浮いた胸とかを想像させるようで、前述の心情を吐露するシーンでは痛々しく繊細で、設定にとても合った官能的な演技をすると思いました。

 トラック04は完全にヒロイン優位後の行為なのですが、「ひどい~」とか「悪魔だ……」とかコミカルっぽいというか、生命力を感じさせる(?)清史郎になっておりかわいかった。ヒロインに対して「兄さんにも渡さない」「僕だけのお嫁さん」「僕の世界には君だけがいればいいと思えた」と言うようになっており、ヒロインとの営みによって兄・ヒロインへの気持ちに変化が表れていることがわかります。その後はドラマパートっぽいやり取りになるのですが、そこで反戦を掲げていてよかった。

 期待以上のところと期待の方が上回ったところがそれぞれありましたが、作品に漂う死のにおい、「弱さ」、病弱攻めを題材にしているところは本当に唯一無二でよかったです。あと義姉さん呼び、萌え。

 

マッチング・アプリPakoru~ヤンキーな幼馴染がお姉ちゃんと呼んできます~

サークル:white mist、シナリオ:こみあ、声優:乃木悠星

※成人向け作品

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幼馴染の吉沢春樹とヒロインは両片想い状態。高校デビューした春樹と距離ができたことに悩んでいたヒロインは、ある日春樹が友達に勧められてマッチングアプリに登録しているのを知る。春樹が知らない女の子と会ってしまうことを恐れて同じマッチングアプリに登録したヒロイン。ホテルにやってきた春樹と理由を隠して話していると、「分かってる?このアプリ、こーいうことするためのヤツだって」と押し倒してきて──。

 サークル・white mistさんのマッチングアプリをテーマにしたシリーズの最新作です。

 乃木悠星さんが年下や今作のような年下に準ずるキャラを演じるということは彼の声質的に多いのですが、

  • ツンデレや照れ隠しとも取れるような粗暴すぎないが乱暴な口調
  • ヒロインへの片想いをこじらせている
  • 「お姉ちゃん」呼び
  • 見た目はヤンキーで悪い友達とつるんでいるが、本当は結構真面目
  • 病み/闇の要素(ヤンデレ

というギャップ萌えかつ自分の年下攻め萌えにバチバチに当てはまるキャラ設定だったため、マジで萌えだな~とすぐ惹かれました。作品紹介の「わからせヤミオチ甘々えっち」という一文が、景気が良くて好きです。

 序盤の必死さ(必死なのは、いいこと)と、中盤の調子に乗ってるクソガキみ、後半の弱さを見せてすがってる感じ、という様々な年下っぽさが聴けてお得。

 病み/闇の要素という点では、ヒロインとの行為を春樹本人が一番拒みながらも暴走を止められない、自分で自分の片想いを最悪な形で終わらせながらも気持ちよくなってしまう、という「彼」側の1人BSS的な傷つきの描写が強い点が、一般的なヤンデレ作品と一線を画すと感じています。

 終盤、春樹がヒロインの気持ちを確かめようとするのですが、ヒロインが頑なに「好き」と言わない(本心なのに)ところにややついていけないのが気になりましたが、おおむね萌えです。

 このサークルの「手軽に恋する短編企画シリーズ」はすべて乃木悠星さんが参加しているのですが、男の娘攻めや年下攻めが充実していて、自分が好きな攻めキャラの微妙なニュアンスをもカバーされていると感じて注目しています。好きな声優さんが出演していても設定やシナリオまでドンピシャという作品にはなかなか巡り会えないことが多いので、嬉しいです。

 

寝取らりるれろ〜心がきもちよくなる本気の口説かれえっち〜

サークル:エネルジコ、シナリオ:兎山もなか、声優:八神仙

※成人向け作品

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NTR趣味の夫に懇願され根負けしたヒロインは、大学時代の友人・伊南匡輝を家に呼び出す。「夫のためにセックスしてほしい」という頼みを聞き入れた匡輝は、だんだんと本気でヒロインを口説いてきて──。

 サークル・エネルジコさんのデビュー作品です。八神仙さんを初めて聴いた作品でした。たぶん自分の中では他の八神仙さん作品もこれを超えることはないと思っていて、なぜならサムネのキャラデザと演技が合いすぎているから。大学時代にヒロインに振られているという関係とヘラヘラした口調と八神仙さんの声とこの長髪のビジュアルがめちゃくちゃ合っている。とにかくサムネイルのキャラデザが好きです。

 八神仙さん、シンプルにいい声で……。軽口を叩きながらさくっと行為を進めつつ、だんだん真剣さと男性的な欲望を見せてくるギャップがよかったです。ヒロインの抵抗する台詞や喘ぎを笑い混じりで復唱してからかう描写とか、抵抗感を感じる人もいるのではないかとちょっと心配するレベルでリアルな生っぽい演技でした。「復讐だよ、復讐」のところとか、張りついた笑顔が声に乗ってて好きです。

 ラストは「安心安全の(?)ラブラブNTR」というコピーにふさわしい展開で、シンプルなギミックだけど一本取られた気分になりました。お見事。

 

ゆきのひ

サークル:white mist、シナリオ:加納安、声優:三橋渡

※成人向け作品

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彼氏である都遊木颯太の家に泊まった翌朝、思いがけない積雪で街の交通はマヒし、どこにも行けなくなってしまう。2人はベランダに積もった雪を触り、手が冷えたら触れ合い、雪が溶けるまでの刹那の時間を過ごす。
雪がとけるまで。
おしまいの時間がくるまで。
のんびりと、ふたりで過ごす、静かで甘い半日間。

 雪を手の中で固めた時のぎぎっとなる感じ、冷えた空気が呼吸で身体の中に入ってくる感覚、窓のサッシがからからと立てる音、そういう「生活」の音があります。『彼と一緒にいる時の空気感』にとことんこだわったということで、三橋渡さんの演技もナチュラル。

 成人向け同人音声といえば、台詞・効果音・演技がどんどん過激に、マキシマリズム的に発達していきます。DLsiteがるまにの「乙女向け同人 ボイス・ASMR」のランキングを見ていると「執着攻め」の人気を感じ、その過激さは想いの強さに結びつけられているように思えます。ちょっと言葉選びが難しい話ですが、ポルノのトレンドって=シスヘテロ男性主体由来なのでデフォルトでミソジニックな目線が入っていることが往々にしてあり、それを受けたキャラクターがドSとか執着とかってラベリングされていて、執着=ヒロインを想う気持ちの強さだからこれも愛っていうつくりになっており、そのミソジニーが正当化されて内包されている感じが100%フィクションとして楽しもうとしても気になってしまうことがあります。

 この作品にはそういった過剰さはありません。キャラクターとヒロインの関係の強さは、高クオリティなサウンド技術によって表現されています。血の通ったキャラクターの精神的・肉体的な結びつきの強さの表現はつまり、ヒロインとの関係も対称的であるということで、そういった成人向け音声作品と出会えたことは、個人的にスウェーデンのポルノ監督・Erika Lustが実践するフェミニスト・ポルノのことを思い出したりしました。

 また、『ゆきのひ』を一番好きになったもうひとつの理由は購入特典で読めるようになる「真あらすじ」です。サークルさんからネタバレしないよう注意書きされているのでネタバレできませんが、Especiaの「くるかな」とか猫 シ Corp. & t e l e p a t h テレパシー能力者の「Building a Better World」とか相対性理論の「シンクロニシティーン」が好きな人は好きなのではと思います(まったく音楽的な何かがあるわけではないのですが、雰囲気として……)。

 

【Dom/sub】いい子だね、神田くん。ド底辺Dom(19)×エリート童貞Sub(28) ~Dom 本郷海斗 編~

サークル:PACIFIER、シナリオ:夏八木瑠一、声優:癒屋シズヤ

※成人向け作品

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Dom/Sub専用クラブでDom役として働く本郷海斗は、金も家もない超ド底辺。
ある日、路地装で若者に絡まれていた男を助ける。 神田と名乗るその男はSub性の持ち主で、コマンドをもらわないと危険な状態だったため、ホテルへ連れて行くこととなる。
Dom/Subの抗えない本能が2人のプレイを加速させていく──。

 2022年発売作品ですが、2023年に聴いたしめちゃくちゃ好きだったので選びました。DLsiteがるまにで販売されている音声作品は、リスナー=作品の一人称の視点が女性の作品がほとんどですが、この作品はリスナー=作品の一人称の視点が男性キャラクターのBL作品です。

 わたしはシチュエーション音声を聴く時、多くが作品を見守る「神の視点」になるのですが、作品の一人称の立場にあるキャラクターについてボンヤリと男性キャラクターだったらな〜みたいに考えて聴くことがあります。『いい子だね、神田くん。』は胸を張ってその楽しみ方ができる作品です。

 そういう防衛機制的な態度をとってまで(異性愛ものの)シチュエーション音声を聴くのは、「攻め」をやってる非実在青少年へのあこがれ(?)というか、なりて〜って気持ちと萌えがあるからです。ポルノでは女性的役割=「受け」側が客体化されるのがデフォルトですが、わたしはとにかく「攻め」を客体化したいので、「攻め」がエロく描写されるシチュエーション音声が好きなのです。

 海斗が好き。繰り返しますがわたしは年下攻め萌えです。そして何より好きだったのは癒屋シズヤさんの声です!葉山翔太さん系のギザギザしたような声がものすごく好きなのですが、この作品の癒屋シズヤさんはまさにそれでした。「!」となって他作品も聴いてみましたが、ここまでカワイイ系のトーンの攻め作品はなかなかなく……なので本当に、貴重。

 ドラマパートというか、セックスに関すること以外(Dom/Subユニバースは海外のBLファンフィクション発祥の特殊設定で、色々な用語が登場する)の台詞も好きで(好きな声なので、そうですね)、色々な攻め喘ぎも楽しめて最高でした!!!特にプレイボーイっぽく行為に酔ったようなトーン、終始くすくす笑いながら興奮する感じと、神田くんの耳元に流し込むように囁く声と、体位をバックに変えた後の低めで唸るような喘ぎ声がエロくて好きです。

 余談なのですが、インボイス制度施行時に一番考えていたのが「癒屋シズヤさんに絶対廃業してほしくない……」でした。インボイス制度反対!

 

 2024年もいい音声作品といい声に出会えるようにやっていこうと思います。

勝手に男性声優楽曲大賞2023

tropical-haka.hatenablog.com

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 最初に自分語りのターンです。

 2013年頃から始まった「男性声優楽曲大賞」の企画に、2021年からこのブログで便乗しています。

 2023年は、神神化身から新曲が出ないならもはややる意味って……みたいになっていた(『神神化身』斜線堂有紀の小説×楽曲のキャラクターコンテンツ。2022年でプロジェクト終了)。

 年間ベストの企画をやるのは、自分の場合、自分の言葉で自分の好きなものを好きと言いたいというのが理由にありますが、この企画の題材となる男性声優が歌唱する楽曲の、特にキャラクターソングと呼ばれる音楽に関心があるため、楽曲元の作品の興亡に振り回されたというのが2023年の印象でした。特に自分が一番好きな『アイドルマスターSideM』のソーシャルゲームがサービス終了したこともあり(楽曲のリリースやキャラクターのCGライブ、声優イベントといった他の展開は続いています)、自分の「好き」がブレまくっていて、聴いていた曲も関心も偏っていました。

 また、あまり年ベスそのものには関係しませんが、個人ブログの意味についてもよく考えていました。いわゆる「踊れる曲」は声優楽曲DJの方が現場ですぐキャッチアップしているけど、踊りっていう共通言語じゃない、自分の言葉でやるにはどうしたらいいのか考えていた。サークル「私的音楽同好会」さんによるキャラソン批評同人誌が発行されるのを見て、

note.com

自分がアニソン・キャラソンの音楽的語りに関心を持ったきっかけのひとつ、『アイカツ!』の同人誌『HELLO Mu WORLD ~アイカツ曲でたどる音楽ジャンル~』のことを思い出したり、あとは7月のX(旧Twitter)騒動とかnoteとか、テキストサービスの場所について考えたり。

 2022年は、自分が関心のある声の表現と先鋭的なエレクトロニックの要素を持った曲のリリースにアンテナを高く持てていたので、比較するとあまり自分っぽい選曲になっている感じがしない気がします。それでも期間内のリリースで好きな曲を考えていったらちゃんとあったので、やりました。例によって順位づけしてありますがあまり関係ないです。

 拙いですが、どうぞ!

 

 

ルール

・2022年12月〜2023年11月に発表された男性声優の楽曲が対象
・1枚のアルバムから選べるのは1曲だけ
・ただし、これは!という1枚のみ2曲選んでもいい

 

9位 Insomnia

歌:ŹOOĻ(CV.広瀬裕也木村昴西山宏太朗近藤隆

作詞:結城アイラ、作曲・編曲:☆Taku Takahashi

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 アイドルもののソーシャルゲームアイドリッシュセブン』に登場するユニット・ŹOOĻの楽曲です。

 2step+ピコピコ系の音+感傷的なボーカル。いわゆる「踊れる」感覚ってエネルギッシュでグルーヴィな音楽に身を任せるというのもいいんだけど、この曲のように内向的な感覚から出てくる「踊り」が好きです。

 楽曲に参加している声優さんがみんな好きで……広瀬裕也さんは今年の曲だと「Cold Garden」の痛くなるような歌い方も好きだったけど、このくらい適度に力が抜けた感じはなかなか聴けない気がします。木村昴さんの豊かな声と発音は曲のクオリティをぐんと高めています。西山宏太朗さんのアニメ声+切なめなニュアンスはやっぱり強い。近藤隆さんの声は3人と比較すると目立たないけど色っぽいです。

 サビ前で歌詞が「お前の欠片を探し/てしまう」と区切られたり、落ちサビで「I know…」が先行したりと、リズムの複雑さに対する言葉の乗せ方の遊び心が感じられます。

終わらないInsomnia
終わって欲しくない
眠りについたら思い出さえ
ぼやけてしまう

このパートに溜息っぽい吐息が重ねられつつも、セクシーな感じに行かずに憂鬱そうなトーンに抑えられているのがいい。

 ていうか、タイトルがいいんだよな、SOLID STATE SURVIVORだし(一般名詞だろ)。

 作詞の結城アイラさんは他にも二次元アイドルソングを多数手がけていて、『アイドルマスターミリオンライブ!』の「FairyTaleじゃいられない」など、☆Taku Takahashiさんはm-floUkatrats FCravexのメンバーとして活動しながら、声優の工藤晴香さんや『ウマ娘』のRemixワークに参加したりしています。

 

8位 Dead Sea Note

歌:Loulou*di(CV.豊永利行武内駿輔山下大輝

作詞・作曲・編曲:はまたけし

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 楽曲とボイスドラマを中心に展開し、アニメ化も決定しているアイドル・ディストピア(私が勝手に言っているだけです)コンテンツの『華Doll*』に登場するユニット・Loulou*diの楽曲です。

 アイドル的なポップさとはやや離れた空想的なサウンドは、Aメロから徐々に音数が増えていき、物々しいようなボーカルに泡が立ちのぼるようなアルペジオが重ねられます。そこで突然、「特別だとか」の歌詞が目の前が開けたように耳に入ってきます。

特別だとかただの虚像だったね
中身が貧しいままで
真実なのか虚飾なのかさえ
勘違いしてただけなんだね
アイドルだとか作り物なだけ

ボーカルは重なって、リズムも四つ打ちになり、緊張感のあるピアノの速いアルペジオが駆け出します。絶望のメッセージを伝えるために歯車が噛み合い回りだす。最後に残るのは空虚な心地で、このいやな力強さと虚無感と触れることができないようなイメージは、"人間のポテンシャルを最適化させるために身体に特殊な種子を埋め込む手術を施し、それが「開花」することで完璧なアイドルになれる"というストーリーで描く、アイドルに理想を仮託するファンダムの倫理を問う部分を楽曲全体で演出して、唯一無二だと思います。声優楽曲のケレン味というか、声優らしい気持ち悪さみたいなものがこの曲では誇張されていて、その印象に拍車をかけています。

 楽曲提供をしているはまたけしさんは、同じくムービック原作のアイドルコンテンツ・ツキノ芸能プロダクションの『SQシリーズ』でQUELLの楽曲を手がけています。そちらの方がより馴染みやすいというか、ポップな印象があります。

 

7位 Moon Shape/明鏡止水

歌:黒野玄武(CV.深町寿成)

作詞:新谷風太、作曲・編曲:めんま

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 『アイドルマスターSideM』のアイドル・黒野玄武さんのソロ楽曲です。

 夜好性+1番・2番の終わりにTrapっぽいリズムが入ってくるサウンドです。

 アイドルマスターSideMは「理由ワケあってアイドル!」というキャッチコピーの作品で、なんらかの職業や社会的立場からアイドルを目指すというのが基本的な世界観です。黒野玄武さんはインテリヤンキーからアイドルへ、という方で、↑のジャケット写真の特攻服ふうの衣装で相棒と神速一魂というユニットに所属しています。しかし、ソーシャルゲームで彼をプロデュースするとわかる「個」としては、天涯孤独であり家族というルーツを持たないことを気にしている、という面があります。その大人びた寂しさが、夜好性が持つ現代的でデフォルトな孤独のイメージに通じていると感じます。

 1番・2番ともに普遍的な「都会」のイメージから、サビにかけてぐっと文語的に、黒野玄武さんにフォーカスした歌詞になっていって、サビでは彼の口癖である四字熟語が違和感なく挿入されています。

 作詞の新谷風太さんは他のアイドルマスターSideMのソロ曲や『ウマ娘』の「GALACTIC PLAYER」「Precious Star Dreamer」など、作曲・編曲のめんまさんはSwitch「Romancing Cruise」などを手がけています。

 

6位 Carry On

歌:ナイトブレイク(CV.伊瀬結陸、諏訪部順一、榊原優希、古川慎

作詞:Sakiel Kiriya、作曲・編曲:Mitsunori Ikeda

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 サンライズがアニメーション制作を手がける、架空の街で行われるカーレースと走り屋のチームを題材にした動画コンテンツ『ハイドライバーズ』のキャラクターソングです。

 真正面からドラムンベースをやっていて……。伊瀬結陸さんの勝ち気でクールな声と正統派ドラムンベースが合いすぎる。作品の夜の高速道路のイメージをそのまま曲にしたような2000年代の疾走感。

 ボーカルが高音:伊瀬結陸さん、榊原優希さん、低音:諏訪部順一さん、古川慎さんと二分できるのですが、それぞれのパートが重なった時の処理が、混ざり合う感じで変容して聴こえます(「感じ取れ 全て置き去ってく風」「埋まらない感覚に焦って Starting over again」とかが顕著)。

 ラストのボーカルチョップ部分大好きすぎます!個人的なフェチなのかもしれませんが、声優さんの声が過剰にチョップドされている作品が好きです。音としては声優さんの生の声がその表現のすべてで、「意味のない音」になるまでばらばらにされた時に捨象されるものに魂の21g的な何かがあるのだろうかとか、色々と考えてときめいてしまいます。

 作詞のSakiel Kiriyaさんは虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の「Go Our Way!」などを手がけていて、作曲・編曲のMitsunori IkedaさんはJazzin'parkのメンバーや☆Taku TakahashiさんとV6「TL」、声優楽曲ではzakbeeさんと『VAZZROCK』の「揺れていたいよ」をコライトしています。

 

5位 King of Voxxx

歌:VadLip(CV.内田雄馬小野賢章花江夏樹八代拓増元拓也武内駿輔

作詞・作曲:ヒゲドライバー、編曲:とおるす

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 アカペラに魅了された高校生たちの青春ストーリーを楽曲で展開していく『アオペラ -aoppella!?-』の新ユニット・VadLipの楽曲です。

 ウィスパーっぽいパートから始まるのですが、他にもサビの内田雄馬さんのがなるような歌い方だったり、そのいわゆるアカペラっぽいような発声だけではないバリエーションがあるのが好きです。

 それとやっぱり、声/音/音楽のリミナルな面が見えるのが好きという個人的なフェチがあります。声はどこから音になるのか?音はどこから音楽になるのか?という問いは、2月に参加したイベント・Voicecore Reading Poetrium『花 羽 音 』で考えたのですが、この曲の中でもその応答ができる気がしています。

 VadLipは他にもアカペラでブレイクビーツをやっていたりしてすごかったです。武内俊輔さん(ビート担当)ってなんでもできるんですね……。


www.youtube.com

 作詞・作曲のヒゲドライバーさんは『アイドルマスターシャイニーカラーズ』の「シャイノグラフィ」やLiella!「ビタミンSUMMER!」の楽曲提供、編曲のとおるすさんはアカペラのYouTubeチャンネルをやっていて、アオペラのJ-POPカバー楽曲のアレンジを手がけるなどしています。

 

4位 Shake it till Make it

歌:川越ボーイズ・クワイア部(CV.鵜澤正太郎土田玲央、小原悠輝、中西南央、金子誠木村昴生田鷹司、伊瀬結陸)

作詞・作曲:YUKI KANESAKA・Frazer Watt、編曲:YUKI KANWSAKA

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 オリジナルアニメ『川越ボーイズ・シング』の劇中歌です。

 古川慎さんの「Forsaken kiss」、豊永利行さんの「Carry my heart to U」など2021年くらいから男性声優楽曲に全英語詞の楽曲がぐっと増えたような気がしますが、キャラクターソングでの全英語詞、バークリー音楽大学出身でボストンで活動する方に歌唱指導されている、というのは特別なのではないかと思っています。

 川越ボーイズ・シングでは、今回声優に初挑戦する俳優の方(小原悠輝さん、中西南央さん)が参加していて生っぽいような演技があったり、ミュージカルやオペラの素養がありラッパーとしても活動する木村昴さん、PENGUIN RESEARCHのボーカルとしても活動する生田鷹司さんが参加していたりと、声優さんが非常にバラエティに富んでいます。この曲にもそのバリエーション豊かな歌声が乗っていて、ゴスペル調のポップソングの上に様々な奥行きを感じることができます。

 演奏家として参加しているのもYUKI KANESAKAさんに縁のある方々ということで豪華なサウンドですが、ボーカルで意識したのは「バラつき」とインタビューで語っておられました。

僕の場合は、全員を十把一絡げにして整えるよりも、それぞれに異なる1人ひとりの個性が合体したときに聴こえる声の幅感のようなものを大切にしました。例えばですが、実際に高校生が全体で声を合わせて歌っても、すべてが完璧に揃うより「バラついているところもあるけれど魅力的だな」ということのほうが、その時期にしか出せない彼らならではの魅力になると思うんです。僕はそういう部分を伝えられるようにアレンジをする役割なので、1回目のバラつきと2回目のバラつきがちょっと違ったり、同じフックを歌っていても後半のほうでもっと盛り上がって「ちょっと熱くなってるぞ!」と感じられたりすることのほうが、音楽として魅力的だと思っていて。アニメの音楽でも、キャラクターにソウルを吹き込んでいる人たちがぐっと汗ばむような瞬間を作りたいと思っているんです。それはAIには決してできないことだと思うので。

「川越ボーイズ・シング」連載第5回|国内外で活動するミュージシャンが集結!音楽担当の3人が語る楽曲創作の裏側 - コミックナタリー 特集・インタビュー

わたしが声優楽曲の声優っぽさにこだわるのもこのことに近くて、まあそれはいいんですけど、なのでこの曲はそういった生の感じが歌声のニュアンスによく表れているんですよね。キャラクターが音楽の中で生き生きとしていることとクオリティの高さどちらも備えている、素晴らしい曲だと思います。

 個人的に生田鷹司さんと伊瀬結陸さんが一卵性双生児の役をやっていることが意外でめちゃくちゃ期待していて、作中だと「声は似てない」ってことになってるのですが、想像よりはるかに似ていてすごくよかったです、好きな2人なので……。

 川越ボーイズ・シング、本編は変なギャグをずっとやってるけど歌の持つちからを何よりも強く描いているアニメで素晴らしいのですが、ディスクが販売されないことになったので(マジで悲しすぎて、苦し紛れにせめて受注生産にできませんか!?ってガチのメールを送りました)ぜひ視聴していただき作品のことを知ってほしいです……。

 楽曲提供をしているYUKI KANESAKAさんは『Dr.STONE』の「カンデンマンガン(Kung Dang Manganese)」を手がけています。作詞・作曲に参加しているFraser Wattさんは、YUKI KANESAKAさんがバークリー音楽大学で教えていた元生徒だそうです(すごすぎ)。

 

3位 蜜柑

歌:XlamV(CV.土田玲央河西健吾、小林千晃、浅沼晋太郎古川慎村瀬歩畠中祐

作詞:田中秀典、作曲・編曲:川口圭太

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 「同一声優が演じる2人のキャラクターにファンが二者択一の投票をし、どちらかだけがデビューする」というセンセーショナルさが話題になっていたアイドルコンテンツ『VS AMBIVALENZ』。この作品より生まれたグループ・XlamVがメインパーソナリティの恋愛系バラエティ番組の主題歌というコンセプトの楽曲です。

 コーラスに歪んだシンセにチャカチャカしたギターの音にクラップと、いわゆる「踊れる」曲だと思います。「ムリが祟っ/たり」「終電間際に呼び/出したり」と、単語の切れ目ではないところでAメロからBメロへ移るリズム感が好きです。

キャラじゃなくたっていいじゃん
今日は 今は

と、ぐっと距離が近くなるのを感じて、

泣きたい君と痛いくらい抱きしめ合いたい

というサビは、「泣き」と「たい」、「い」と「たい」がそれぞれ1オクターブ離れているのが、思いがあふれるようでカタルシスを感じます。口語的な歌詞にニュアンスをつけてゴージャスな響きにしているのが、生活の中にドラマを見つける歌詞を最大限表現しています。そして2サビキャンセル。

 作品にサバイバルオーディション番組の影響を感じる点もですが、前述のバラエティ番組の公式サイトも準備されていて、とことんリアル志向であることがうかがえます。

 作詞の田中秀典さんはミネラル★ミラクル★ミューズの「フライト23時」など、作曲・編曲の川口圭太さんは夏川椎菜さんの「ナイトフライトライト」などを手がけています。2人が提供している寿美菜子さんの「アンブレラ・アンブレラ」はこの曲に通じるエッセンスを感じます。

 

2位 Money!Money!Money!

歌:豹堂杢児(CV.堂島颯人)、宝来清麿(小林裕介

作詞:CHEHON、作曲:Massive B/CHEHON

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 ニューヨークのレーベル・Massive Bなどレゲエアーティストが手がける楽曲と声優による異次元ミュージックエンターテインメントコンテンツ『JAMROCK』のキャラクターソングです。

 チープなメロディと「稼いで稼いで稼ぎまくる」を連呼するHookが呼び込み君チックで好きです。堂島颯人さんのギチギチに詰まった感じと、「よく口が回る」感のあるへらへらした小林裕介さんのそれぞれのフロウの対比が、聴いていて気持ちいい。最後の方の「CHECK CHECK…OK 稼いで稼いで稼ぎまくる(巻き舌)」も、小林裕介さんの声のさわやかさでさわやかな範囲にとどまっている感じがめっちゃいいし、おもしろいです。声優さんの声でレゲエをやる意味とおもしろさがこの曲にあります。

 楽曲提供をしているMassive Bは1991年に立ち上げられたレーベルで、CHEHON氏は「韻波句徒」(『JAMROCK』キャラによるカバーもあります)で知られる日本のレゲエDeejayです。CHEHON氏が大麻取締法違反で逮捕されたのでプロジェクトは一時休止中となっています。再開を応援したいです……。

大麻は違法、大麻は有害。

 

1位 綺麗だ

歌:テティス斑目ジュナ)(CV.寺島惇太

作詞・作曲・編曲:Somari

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 集英社×avexのメディアミックスコンテンツ『Arcanamusica』の楽曲で、ジュエリーデザイナーの斑目ジュナさんのキャラクターソングです。

 ヒップホップっぽいベースを中心に宝石がきらめくような音や有機的なグリッチが左右の様々な位置でASMR的な質感で鳴ります。音数が一気に減るタイミングが随所にあり、その間をべたべたとした声優っぽい、含みのある調子がつけられた台詞っぽいボーカルの余韻が埋めています。口語的で一続きのモノローグのような歌詞に、さらに様々に加工された声が重ねられています。

 キャラクターソングの面白さは、キャラクターの設定というテキストやイメージの情報がいかに音に変換されているかというところだと思っていて、この曲の場合は、ジュエリーデザイナーやミステリアスで気まぐれな性格といった設定が表現されていますが、さらにASMR的な質感のサウンドやボーカルの重ねの処理に聴覚体験としてのおもしろさも感じられる点が一線を画すと思っていて、大好きです。

 楽曲提供をしているSomariさんは、普段はボカロを使った楽曲制作をしている他、宮下遊さんへの楽曲提供などを行っています。ボカロPっぽい言葉のあてはめ方、という感じが声優さんへの提供曲にも生きている気がします。

 

 以上、他にも好きな曲はありましたが、9選でした。*1

 2024年もいい音楽といい声に出会えるように、AIとファスト萌えに負けずにやっていこうと思います。ありがとうございました(終)

 

open.spotify.com

*1:直前にこちらを見ていたこともあり、あんまりダラダラやらずに9選にしようと思いました。

karutobako.hatenablog.com

GROWING SIGN@Lシリーズから始めるアイドルマスターSideM

この記事は Otaku Social(おたそ~)Advent Calendar 2023 22日目の記事です。

 

はじめに

 『アイドルマスターSideM』(以下、SideM)とは、2014年にモバゲーで開始した、アイドル事務所「315サイコープロダクション」を舞台にしたソーシャルゲーム(現在はサービス終了)をはじめとするメディアミックスコンテンツです。「GROWING SIGN@L」(GS)は、2021年から発売しているSideMのCDシリーズで、同じく2021年からサービス開始したソーシャルゲームアイドルマスターSideM GROWING STARS』(通称サイスタ)と合わせて展開されていたものです。

 残念ながらサイスタはサービス終了してしまっていますし、GSシリーズはSideMの最新楽曲というわけでもありません。今このCDシリーズを紹介する理由ワケはわたしのごく個人的な体験に基づいています。

 わたしはモバゲー版SideMサービス開始時から作品のファンなのですが、GSシリーズおよびサイスタから追加されたグループC.FIRSTの曲を初めて聴いた時から、もう一度SideMのファン人生が始まったと思っています。そのくらいわたしにとってGSシリーズは巨大な出来事でした。

 『BRUTUSアイマス特集(No. 933)のBase Ball Bear小出祐介さんのコメントの引用なのですが、SideMの今までの楽曲って“「餃子のあとの水めっちゃ美味い!」”の感覚があるなと思っていて、たとえば三次元の男性アイドルの音楽からの影響というよりも、個性豊かなキャラクターがそのまま楽曲のキャラクターになるような、いわゆるアニソン・キャラソンの文脈に乗っているものが多いと思っていました。しかし、ユニットとしてGSシリーズの先陣を切ったC.FIRSTの同時代性と「内向的な踊り」の感覚のぶっ刺さりや、続く他ユニットがアニソンにとどまらないジャンルへ接続されうる音楽性を持った楽曲を出してきたことが、とにかく革新的に感じてすごいのです!

 前置きが長くなってしまいましたが、そんなGSシリーズを音楽的語りとオタク的語りの両方からみていきながら、SideMを知るきっかけになったら嬉しいという記事です!なお、本エントリ内に登場する楽曲は2023年12月時点ですべてサブスク配信されています。CDには+キャラクターのボイスドラマが収録されているので、この曲を歌っているアイドルのことをもっと知りたい!と思ったらぜひCDもチェックしてみてください!

 

 

315 ALLSTARS - GROWING SIGN@L 01 Growing Smiles!

Growing Smiles!
作詞:松井洋平、作曲・編曲:光増ハジメ

Growing Smiles!

Growing Smiles!

  • 315 ALLSTARS
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

DRIVE A LIVE
作詞・作曲:BNSI(柿埜嘉奈子)、編曲:滝澤俊輔[TRYTONELABO]

DRIVE A LIVE

DRIVE A LIVE

  • 315 ALLSTARS
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

Beyond The Dream
作詞:BNSI(柿埜 嘉奈子)、作曲・編曲:EFFY

Beyond The Dream (GROWING SIGN@L Ver.)

Beyond The Dream (GROWING SIGN@L Ver.)

  • 315 ALLSTARS
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

NEXT STAGE!
作詞:柿埜嘉奈子、作曲・編曲:EFFY

NEXT STAGE!

NEXT STAGE!

  • 315 ALLSTARS
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 SideMの315プロに所属するアイドル全員が歌唱するいわゆる「全体曲」が収録されています。「Growing Smiles!」は新曲で、残り3曲は既発表曲に前述の追加アイドル・C.FIRSTのボーカルが加わったもの。先ほどSideMの音楽にある“「餃子のあとの水めっちゃ美味い!」”の感覚を若干ポジティブっぽくない感じで引用してしまいましたが、すごくよい誉め言葉だと思っています。

 文中で理由ワケ理由ワケいうとりますが、SideMのキャッチコピーはずばり「医者!フリーター!自衛官!理由(ワケ)あって、アイドル!」というもので、何らかの職業や社会的な立場にあったキャラクターがアイドルを目指す、という作品。すべてが後ろ向きな理由じゃなくても一度得たものや夢を手放したり、諦めたりした人たちの物語で、その少なからずdepressiveなところからのスタートが好きです。その世界観が、全体曲の歌詞にはめいっぱい表現されています。

 楽曲キーワード:主題歌、大人数、(Re)スタート、ワクワクした気持ち

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C.FIRST - GROWING SIGN@L 02 C.FIRST

歌:C.FIRST/天峰秀(CV.伊瀬結陸)、花園百々人(CV.宮﨑雅也)眉見鋭心(CV.大塚剛央)

We're the one
作詞:Kanata Okajima、作曲:本多友紀Arte Refact)、編曲:河合泰志(Arte Refact

We're the one

We're the one

  • C.FIRST
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

Not Alone
作詞:Kanata Okajima、作曲:本多友紀Arte Refact)、編曲:河合泰志(Arte Refact

Not Alone

Not Alone

  • C.FIRST
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 C.FIRST(クラスファースト)は、メンバーの全員が有名な生徒会長という設定で、そのホープ感、SideMには実はあまりいなかった男子高校生ユニットという要素がフレッシュなEDM風味の音楽性によく表れています。パンデミックやステイホームの概念によって、2020年以降、孤独や現在の先の見えなさというものがわたしたちの生活にいっそう深く根を下ろしましたが、その内向的な同時代性が前提としてありながら、未来や未知へ進むさまが歌詞に強く表現されています。

 例えば「We're the one」は1番Aメロから強烈です。

雁字搦めの世界の中で
自分の声を聞いたのは、いつだろう?

C.FIRST We're the one 歌詞 - 歌ネット

「代弁者としてのアイドル」という点は、今までのSideMが示してきたアイドル像に重なる部分と新たなレイヤーをどちらも感じます。

Ah もし叶うなら
温かな あなたの頬に触れたい
勇気を分かち合おう

C.FIRST We're the one 歌詞 - 歌ネット

 弱さの中の強さというバランスの繊細さは、「Not Alone」により強く表現されています。感傷的なメロを打ち砕くような12/8拍子のビートのイントロからそうだし、「わかんない」「かも」のような、言い切れない口語的な言葉選びもそう。

Give it a shot 今なら
踏み出せるから
Give it a try 迷わない
もう嘘はつかない

C.FIRST Not Alone 歌詞 - 歌ネット

踏み出せない時もあるから、「今なら踏み出せる」。嘘をついた時もあるから、「もう嘘はつかない」。そんなふうに感じます。

 楽曲キーワード:優等生、EDM、等身大の弱さ

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FRAME - GROWING SIGN@L 03 FRAME

歌:FRAME/握野英雄(CV.熊谷健太郎)、木村龍(CV.濱 健人)、信玄誠司(CV.増元拓也

Plus 1 Good Day!
作詞:真崎エリカ、作曲・編曲:アッシュ井上(Dream Monster)

Plus 1 Good Day!

Plus 1 Good Day!

  • FRAME
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

SOOTHING PLACE
作詞:真崎エリカ、作曲・編曲:h-wonder

SOOTHING PLACE

SOOTHING PLACE

  • FRAME
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 FRAME(フレーム)は、メンバーの前職が消防士・警察官・自衛官で、楽曲にも「生活」や「誰かを助ける、支える、寄り添う」という要素がよく表れています。

 GS03の2曲はずばり朝と夜がテーマで、「Plus 1 Good Day!」のポジティブでさわやかな曲調と、朝のイメージの中に確かにある不安感さえも肯定してくれる歌詞に、普遍的な共感よりもっとパーソナルな気持ちで背中を押される気持ちになります。

小さな後押しだけど聞こえるか?
Hey you (Hey you)
大丈夫

FRAME Plus 1 Good Day! 歌詞 - 歌ネット

「大丈夫」という言葉からは、「大丈夫じゃない状態」への想像力も感じて心のやわらかいところに触れられた感覚になります。

 1日の終わりをテーマにした「SOOTHING PLACE」は、ジャスコテック的な音と「ありふれた、なんの変哲もない日」を歌うボーカルが優しいです。特別じゃない1日だってかけがえないものだということを伝える、「ハレ」の日じゃない日々とともにある曲。この曲があるから、そんな日も大切だと思えます。

 楽曲キーワード:生活、ポップス、癒し

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Café Parade - GROWING SIGN@L 04

歌:Café Parade/神谷幸広(CV.狩野翔)東雲荘一郎(CV.天﨑滉平)アスラン=ベルゼビュートⅡ世(CV.古川慎)、卯月巻緒(CV.児玉卓也)、水嶋咲(CV.小林大紀

Pavé Étoiles
作詞:松井洋平、作曲:丸山真由子、 編曲:清水武仁

Pavé Étoiles

Pavé Étoiles

  • Café Parade
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

Teatime Cliché
作詞:松井洋平、作曲:丸山真由子、 編曲:TOMISIRO

Teatime Cliché

Teatime Cliché

  • Café Parade
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 Café Parade(カフェパレード)は、同じカフェに勤めていた5人(+マスコットキャラ1人)がメンバーで、「おもてなし」の精神が表れた歌詞と、ビッグバンドを思わせるような曲調が特徴的です。

 冒頭で、“アニソンにとどまらないジャンルへ接続されうる音楽性を持った楽曲”があると述べましたが、真っ先に挙げたいのはこのGS04です。音楽グループ・HΛLの元メンバーたちが作・編曲を手がけている聴き応えのあるゴージャスなサウンドは、5人の甘くてやわらかく伸びのいい声、さながら声楽家のようにテクニカルでハイカロリーな声、オクターブを行き来して跳ねまくる声といったカオスなハーモニーに負けず、互いに高め合っています。「Pavé Étoiles」は、一人ひとりがときめきを感じる心を恐れないために、背中を後押ししてくれる歌詞です。メッセージはミュージカルソングのように胸に残ります。

 そして「Teatime Cliché」は渋谷系~Brazilian Drum & Bassな曲調で、キャラクターソングから音楽ジャンルへアクセスするような楽曲がもはや事件です。この曲と渋谷系という音楽ジャンルの関係については以前記事にしたので、よければご覧ください。

tropical-haka.hatenablog.com

クリシェ=常套句と店員のかけ声(「ごゆっくりと」etc.)を重ね、日常の中にあるカフェの風景を特別なものにしたい、ありきたりなものを大切にしたいという小さな幸せを願う思いを歌っています。この店員としての表情=よそ行き感のようなものが、渋谷系の雰囲気とマッチしていてすごくおしゃれです。

 FRAMEと同様に、「ハレ」の日も「ケ」の日もともにある、日々を大切にする曲たちです。

 楽曲キーワード:ゴージャス、個性派、渋谷系

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Legenders - GROWING SIGN@L 05 Legenders

歌:Legenders/葛之葉雨彦(CV.笠間淳)、北村想楽(CV.汐谷文康)、古論クリス(CV.駒田航) 

Time Before Time
作詞:松井洋平、作曲・編曲:玉木千尋

Time Before Time

Time Before Time

  • Legenders
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

PERMAFROST
作詞:松井洋平、作曲:水永ここ、編曲:安岡洋一郎

PERMAFROST

PERMAFROST

  • Legenders
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 Legenders(レジェンダーズ)は、ゲーム内のオーディション企画で選出された偉人をモチーフにした3人によるユニットで、「時間」や「歴史」という要素が表れているのが特徴です。歌詞はもとより曲調も「時代」からの連想なのか、GS05では平成っぽさが全開のサウンド。加えて歌詞がラブソングなので、最強です。

 やや脱線しますが、わたしは「Time Before Time」からは宇多田ヒカルの「Celebrate」的な雰囲気を感じます。

Celebrate

Celebrate

  • provided courtesy of iTunes

とにかくエレクトロポップ+冬+ラブソングというのが2000年代J-POPをイメージさせます。歌詞は、普遍的なラブソングでありながら、Legendersのテーマである「時間」もカバーしていて、このユニットが歌う意味とポップソングを歌うアイドルとしてのパブリックな一面を見る感覚のどちらも感じることができます。

いつかこの時計が
秒針さえも重なっていくまで
1人でいると映らなかった景色が
2人の意味を変えてしまうね

Legenders Time Before Time 歌詞 - 歌ネット

恋人同士の距離感を歌いながらも、特別さを噛み締めたり、当たり前の幸せにまだ惑ったりするような、大人びたニュアンスが表現された歌詞がかっこいいです。

 「PERMAFROST」は、吐いた息が白くなるような冷たい空気のように鋭いストリングスが印象的で、降る雪のようにサビに向けて音が重なり、ちょっとレトロで特徴的なリフに繋がります。1 番と2 番でそれぞれ雪の結晶を歯車に例える描写が登場しますが、Legendersのスチームパンク的なモチーフと、雪が降ってくるに至るまでの時間のイメージがあってとても隙がない喩えだと思います。

 楽曲キーワード:平成J-POP、大人の関係、ラブソング

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彩 - GROWING SIGN@L 06 彩

歌:彩/猫柳キリオ(CV.山下大輝)、華村翔真(CV.バレッタ裕)、清澄九郎(CV.中田祐矢)

いとをかし!〜一彩×合彩〜
作詞:松井洋平、作曲・編曲:流歌

いとをかし!~一彩×合彩~

いとをかし!~一彩×合彩~

  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

彩リノ歌
作詞:松井洋平、作曲・編曲:関口昌大

彩リノ歌

彩リノ歌

  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 彩(さい)は、日本の伝統文化を生業としてきたメンバーによる、いにしえから続く人間の変わらない心や現代からみる古典のおもしろさを和楽器の要素がミックスされた楽曲に乗せて歌うユニットです。

 コール&レスポンスや台詞が賑やかな「いとをかし!〜一彩×合彩〜」は、彩のハッピーな一面が全開です。“ときめく心や「好き」の気持ちで人と人は繋がり合えることは、いつの時代だって最高!”というメッセージは、個人的にもすごく共感するものなので胸にくるものがあります。

祭囃子が胸に響くほどに
贈りたい言葉は『最高!〜いとをかし〜』

彩 いとをかし!~一彩×合彩~ 歌詞 - 歌ネット

ギターサウンドやシンセベースが印象的ですが、さりげなく三味線の音が散りばめられています。

 和ロックサウンドの「彩リノ歌」は、3人の自らのアイドル人生への意志を歌った曲です。

積み重なった伝統って価値観は
未来を縛るものじゃない

彩 彩リノ歌 歌詞 - 歌ネット

元々、落語家・歌舞伎役者・茶道家という日本の伝統文化を生業としていた3人がアイドルになったということは、ある意味ではその道を途絶えさせたというようにも捉えられるのですが、そうではないし、アイドル活動の先にはそれがある、という思いを力強く伝えています。

胸の芯にある糸と 違えるお互いの色を
織り上げて伝統は生まれる

彩 彩リノ歌 歌詞 - 歌ネット

お祭りソング的な一面を見せていた「いとをかし!〜一彩×合彩〜」から翻って、クールさと真剣な熱がめらめらと伝わってきます。

 楽曲キーワード:和楽器、コール&レスポンス、ギャップ

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もふもふえん - GROWING SIGN@L 07 もふもふえん

歌:もふもふえん/岡村直央(CV.矢野奨吾)、橘志狼(CV.古畑恵介)、姫野かのん(CV.村瀬歩

はるかぜバトン
作詞:真崎エリカ、作曲・編曲:アオワイファイ

はるかぜバトン

はるかぜバトン

  • もふもふえん
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

そだてっ!たいむかぷせる
作詞:真崎エリカ、作曲・編曲:ヒゲドライバー

そだてっ!たいむかぷせる

そだてっ!たいむかぷせる

  • もふもふえん
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 もふもふえんは、315プロに所属する以前から芸能活動をしていた小学生3人によるユニットです。例えば他のアイドルものキャラクターコンテンツでは、ここまで年齢が低いキャラクターはなかなかいないので面食らうかもしれませんが、幼さと芸能活動経験のギャップや、その大人と子どもの絶妙なバランスを含ませながら小学生を演じる声優さん(もちろん、成人済み!)のテクニック、まっすぐ伝えられるからこそもう子どもの年齢ではなくなった人々にも刺さる台詞や歌詞……という、魅力がいっぱいです。

 GS07は、どちらも卒業がテーマに感じられる曲です。きらきらしたピアノのグリッサンドから始まる「はるかぜバトン」は、ドキドキとワクワクと不安を持って出発するあなたの背中を3人が押してくれる曲です。

 「そだてっ!たいむかぷせる」はチップチューンサウンドが散りばめられ、おもちゃ箱をひっくり返したよう(使い古されすぎていますが……)にはちゃめちゃなサウンドで、展開が目まぐるしいです。

たくさん今日をとびこえて まぶしいくらいとびこんで
だいたんにちゃれんじ げっとで、もふもふっ!
めもり~ カンに詰め込んで いつかキミと手にとろう
おーけい? おーらいっ!
ねっ やくそく

もふもふえん そだてっ!たいむかぷせる 歌詞 - 歌ネット

未来へのワクワクを歌った歌詞は、1番も2番もサビが「いつかキミと○○しよう」というものになっていて、その「約束」に「キミ」との別れがしのばされています。

 前述したことの繰り返しになりますが、メッセージが素直だからこそ「大人になって道徳を説いてくれる人なんていないから子供向けアニメは大人に刺さる」的な感じになっており、胸にくるものがあります。

 楽曲キーワード:卒業、ピコピコ系、素直さ

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Altessimo - GROWING SIGN@L 08 Altessimo

歌:Altessimo/都築圭(CV.土岐隼一)、神楽麗(CV.永野由祐)

Infinite Octave!
作詞:真崎エリカ、作曲:小高光太郎UiNA、編曲:小高光太郎・矢野達也

Infinite Octave!

Infinite Octave!

  • Altessimo
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

Sign of Hope
作詞:真崎エリカ、作曲・編曲:矢野達也

Sign of Hope

Sign of Hope

  • Altessimo
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 Altessimo(アルテッシモ)は、元音楽家の2人によるユニットで、オーケストラ調の楽曲と高い歌唱力が特徴的です。メンバーそれぞれのモチーフであるピアノとヴァイオリンが楽曲内でフィーチャーされていることにも注目です。

 「Infinite Octave!」は変拍子が特徴的で、ピアノとヴァイオリンによる密やかな二重奏から一気に世界が広がるようにコーラスが重なるイントロだけでAltessimoの世界観に引き込まれます。イメージされるのは、まばゆいスポットライトに照らされて、顎を上げて背筋を伸ばしてホールを見据えているようなステージ上の景色。

そう、だから(大丈夫)
ここから(遥かへ)
踏み出そう(未来へ)

Altessimo Infinite Octave! 歌詞 - 歌ネット

パートの途中から長調へ転調するのがすごく好きです。

 音楽用語が歌詞に散りばめられています。

  • 8度

1オクターブのことで、まさにタイトルの象徴です。

  • ペダル

ピアノには3本のペダルが付いていて、踏むことで音色を操作できます。まず、「踏む・踏み込む」という動作そのものから感じられる勢いのようなものがあります。次に、踏むとピアノ弦を押さえているダンパーという部品の動きを止め(ピアノ弦が解放され)、音が長く伸びる効果をもたらすダンパーペダルというものがあり、この音を長く持続させる・増幅させるといった意味もかけているのではないかと感じます。

  • テヌート

テヌートtenutoは、「音符の長さを十分に保って演奏する」という意味。

モノフォニーmonophonyは、1つの旋律から成る音楽、ポリフォニーpolyphonyは複数のパートから成る音楽のこと。まさに2人がアイドルとして出会って新たな音楽が生まれていくさまです。

 「Sign of Hope」は幻想的な曲です。タイトルを回収しているサビのフレーズは、6/8拍子のリズムによって造語的な響きに聞こえ、より深くに誘われるようです。ちょっと志方あきこ的なフォークロア同人音楽っぽい雰囲気もあります。

 この曲はとにかく歌詞に気迫があると思っていて、

不完全な言葉が空気に変わり 肺から漏れる僕らは
そんな絶望を撫でてくみたいに 旋律を紡いでた
祈りに似た脆弱な音色は
一瞬で晴れは呼べない

Altessimo Sign of Hope 歌詞 - 歌ネット

すごすぎ。

 楽曲キーワード:オーケストラ、heavenly、幻想性

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THE 虎牙道 - GROWING SIGN@L 09 THE 虎牙道

歌:THE 虎牙道/大河タケル(CV.寺島惇太)、円城寺道流(CV.濱野大輝)、牙崎漣(CV.小松昌平)

K.now O.nly
作詞:結城アイラ、作曲・編曲:本多友紀Arte Refact

K.now O.nly

K.now O.nly

  • THE 虎牙道
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

CATCH ME IF YOU CAN
作詞:結城アイラ、作曲:本多友紀(Arte Refact)、編曲:河合泰志(Arte Refact)

CATCH ME IF YOU CAN

CATCH ME IF YOU CAN

  • THE 虎牙道
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 THE 虎牙道(ザ こがどう)は、格闘技に縁を持つパワフルな3人によるユニットです。THE 虎舞竜ではない。シンセパンクやEBMのインダストリアルなエッセンスを感じつつ、キャラクターらしさが全開のボーカルと合わさっていい意味でとってもアニソン・ゲームミュージックらしいアツい曲調をしています。

 「K.now O.nly」は、終始煽られるようなコーラスや落ちサビ前のカウントに血が沸き肉踊る、な感覚がかきたてられます。まさに闘志。「コーラス部分がゲームのコマンドっぽくなっている」という耳で聞いただけではわからないギミックが歌詞にあります。

THE 虎牙道 K.now O.nly 歌詞 - 歌ネット

 「CATCH ME IF YOU CAN」はよりEDMっぽいギラギラしたハードな音が重ねられた曲。2番後の間奏の湿っぽいエレキギター、落ちサビで静かになる感じ……など、きちんと踏んでほしい段階を踏んでくれる感じがします。土埃が舞うようなラストの処理が好きです。

 楽曲キーワード:ギラギラ、力強さ、ゲームミュージック

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F-LAGS - GROWING SIGN@L 10 F-LAGS

歌:F-LAGS/秋月涼(CV.三瓶由布子)、兜大吾(CV.浦尾岳大)、九十九一希(CV.比留間俊哉)

Made in「 ♪ 」
作詞:結城アイラ、作曲・編曲:アッシュ井上 (Dream Monster)

Made in「 ♪ 」

Made in「 ♪ 」

  • F-LAGS
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

Casually!
作詞 結城アイラ、作曲・編曲  アッシュ井上 (Dream Monster)

Casually!

Casually!

  • F-LAGS
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 F-LAGS(フラッグス)3人の共通点を挙げるなら、ディープな秘密と向き合ってアイドルになった、ということでしょうか。メンバーの秋月涼さんはSideMが初登場ではなく、アイドルマスターの他IPのゲームに先駆けて登場したアイドルでした。ざっくり言うと社長命令で女性としてアイドルデビューする男の娘……みたいな時代を感じるシナリオでしたが、そのエンディングのひとつ、「男性アイドルとしてアイドル再デビューする」の続き、というのがSideMでのストーリーです。男性として活動していきたい、とカミングアウトする秋月涼さんの姿を見て他のメンバーもアイドルを目指した、というものになっています。

 そんなF-LAGSの音楽性は、テーマの旗やトリコロールから連想される船や海、旅がモチーフになっていたり、さわやかさやフレッシュという言葉がぴったりくるようなものが多いです。「Made in 「 ♪ 」」はやわらかなエレクトロニックで、生活の中にある「旅」を歌う、背筋をちょっと伸ばしてくれるような曲です。混声であることを感じさせない心地いい高さのメロディ。

 翻って「Casually!」は、週末の解放感をブラスサウンドに乗せたノリノリな曲。こちらも小さな幸せと「自分らしくいること」を肯定するもので、個人的な感想ですが、F-LAGSはFRAMEと通じ合うような生活への寄り添いが感じられます。

 楽曲キーワード:フレッシュ、混声、癒し

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神速一魂 - GROWING SIGN@L 11 神速一魂 

歌:神速一魂/紅井朱雀(CV.益山武明)、黒野玄武(CV.深町寿成)

ROUTE77
作詞:結城アイラ、作曲・編曲:増田武史

ROUTE77

ROUTE77

  • 神速一魂
  • アニメ
  • ¥255

タソガレドキ、Bluesy
作詞 結城アイラ、作曲・編曲:増田武史

タソガレドキ、Bluesy

タソガレドキ、Bluesy

  • 神速一魂
  • アニメ
  • ¥255

 神速一魂(しんそくいっこん)はヤンキー高校生2人によるユニットです。ヤンキーと音楽といえば、気志團がヤンキー文化とパンクロックをルーツに「ヤンク・ロック」というジャンルを打ち出したことが連想される人もいると思いますが、まさに神速一魂は骨太なサウンドにヤンキー文化がミクスチャーされ、さらにアイドルという唯一無二の存在だと思います。

 「ROUTE77」はツーリングとアイドル人生がかかった歌詞が秀逸。

登れ この先キツい坂 へばりそうでも
大事なモン守るためとツッパれ!
お前とならばてっぺんまで

神速一魂 ROUTE77 歌詞 - 歌ネット

このベタベタの歌詞を正面切って歌うボーカルが本当にかっこよくて、痺れます。さらにコール&レスポンス要素もあって、汗をかきながらオイオイ言いたい。

 「タソガレドキ、Bluesy」は、一言で言うなら神速一魂が主人公のアニメのエンディング曲です(相対して「ROUTE77」がオープニング曲に感じる叙述トリック(誤用))。赤い日没をバイクで走ってきた道から眺めるようなイメージがすぐ浮かぶ、ずばりと言い当てられたみたいにアニメのエンディング曲みたいなセンチメンタルと安心感を感じる曲はすごい。また、SideMには他にも2人組のユニットはいますが、「相棒」という関係性では神速一魂がとにかく強く、いつも隣にある熱を感じさせる歌詞がアツいです。アイドルの場合、歌詞の二人称はファンやリスナーが代入可能なようにつくられていることが多いと思いますが、神速一魂はほぼお互いのことを歌っていると感じます。

 楽曲キーワード:パンク、漢気、コール&レスポンス

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Jupiter - GROWING SIGN@L 12 Jupiter

歌:Jupiter/天ヶ瀬冬馬(CV.寺島拓篤)、御手洗翔太(CV.松岡禎丞)、伊集院北斗(CV.神原大地)

Inner Dignity
作詞:真崎エリカ、作曲:BNSI(濱本理央)、編曲:中土智博

Inner Dignity

Inner Dignity

  • Jupiter
  • アニメ
  • ¥255

Before long, DELIGHT
作詞:真崎エリカ、作曲・編曲:山口朗彦

Before long, DELIGHT

Before long, DELIGHT

  • Jupiter
  • アニメ
  • ¥255

 Jupiter(ジュピター)もF-LAGSの秋月涼さん同様SideMが初登場ではなく、アイドルマスターの他IPのゲーム(秋月涼さんが登場するゲームとはまた別です)に先駆けてライバルとして登場したアイドルでした。ゲーム内で所属していた事務所は芸能界で生き残るために手段を選ばず、所属タレントを駒と考えるような社長が牛耳っていました。そんな事務所を離れて、315プロダクションで再デビューというのがSideMでのストーリーです。

 さて、そんなJupiterは前述の他IPゲーム時代にCDを出しており(秋月涼さんも出していますが)、GS12はそのCDが下地になっていることを強く感じるサウンドメイクでした。「Inner Dignity」は、まさに「Alice or Guilty」を強く意識した曲で、台詞パートがあること、ギターが中心となった仄暗い雰囲気などが共通します(コンポーザーも共通しています)。しかし、前しか向けない感じが確かにあり、その胸のうちに突き動かされる疾走感に導かれるのは、ジャケット写真みたいな朝焼けの光です。

 「Before long, DELIGHT」は、前述のCDに収録されている御手洗翔太さんのソロ曲「On Sunday」っぽさがあります。ちょっと昔っぽいというか、アイドルを二次元に落とし込もうとしているけど、最新にアップデートはされていない垢ぬけなさのあるような曲調が好きです。キラキラした音やストリングスやブラスやスクラッチ音があちこちで瞬いて、夢を見せてくれる王道アイドルっぽさ。

 楽曲キーワード:ぎらつき、(Re)スタート、王道

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S.E.M - GROWING SIGN@L 13 S.E.M

歌:S.E.M/硲道夫(CV.伊東健人)、舞田類(CV.榎木淳弥)、山下次郎(CV.中島ヨシキ

Multiple Entertainment Show!
作詞:松井洋平、作曲・編曲:桑原佑介

Multiple Entertainment Show!

Multiple Entertainment Show!

  • S.E.M
  • アニメ
  • ¥255

Dance in the school!
作詞:松井洋平、作曲・編曲:桑原佑介

Dance in the school!

Dance in the school!

  • S.E.M
  • アニメ
  • ¥255

 S.E.M(セム)は、メンバー全員が同じ高校に勤めていた教師で、学ぶこと、その先に無限の未来や可能性があることをコミカルさも交えつつ表現するユニットです。

 「Multiple Entertainment Show!」は、頭文字を取るとMES→SEMになるという遊び心が早速表れています。

常識を疑った人たちが 創ってきた
舞台でLet's Dance!

S.E.M Multiple Entertainment Show! 歌詞 - 歌ネット

いい歌詞!!!先ほどもふもふえんについて、彼らの幼さからくる素直なメッセージが響くという話をしましたが、こちらは大人が頑張っていることからくるメッセージがぐっときます。ダブルミーニングが詰めこまれた歌詞と16ビート。

 「Dance in the school!」はタイトルの通り、学びそのものというよりも学校にスポットが当てられた曲です。ちょっとダサさのあるようなリフと激しいビートと緩急のある展開が癖になります。

 ちょっと脱線しますが、S.E.Mの「Study Equal Masic!」という過去の楽曲が最近TikTokでバズった(?)らしく(確認してみたのですが、ライブの無断転載映像がたくさん出てきてグエーとなったので初出が定かでない)、いわゆる「電波ソング」っぽいエッセンスが特徴でもあると思います。もう自分は聴きすぎていてわからないのですが、電波ソング的な中毒性を求めている方にぜひ聴いてほしいと思います。

 楽曲キーワード:青春、中毒性、個性派

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DRAMATIC STARS - GROWING SIGN@L 14 DRAMATIC STARS 

歌:DRAMATIC STARS/天道輝(CV.仲村宗悟)、桜庭薫(CV.内田雄馬)、柏木翼(CV.八代拓

Change to Chance
作詞:松井洋平 作曲・編曲:南田健吾

Change to Chance

Change to Chance

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Rainy Memories
作詞:松井洋平 作曲・編曲:成瀬裕介

Rainy Memories

Rainy Memories

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 DRAMATIC DTARS(ドラマチックスターズ)は、ゲームのチュートリアルで最初にこのユニットから1人のカードを選択できる、いわばポケモンの御三家的なユニットです。プレイヤーが最初に知るキャラクターということもあり、最年長が28歳、前職が医者のメンバーがいるなど、色々と既成概念を壊すような設定で、とてもSideMらしいです。

 GS14は、彼らの雰囲気だけでない、確かな人生経験からくる大人っぽさをフィーチャーしたようなクールな2曲となっています。「Change to Chance」は、V6「TAKE ME HIGHER」っぽい(ていうか、もろリファレンスだと思う)平成っぽさが全開です。

失って 傷ついて だけどそれだけじゃないさ
手に入れて 抱きしめて もっと大切に思える
いつだって 誰だって どこだって いまだって
きっと未来ってドラマ変えていくんだから

DRAMATIC STARS Change to Chance 歌詞 - 歌ネット

手放さなければならなかったり、諦めざるを得なかったり、といったところからもう一度始める、というSideM全体のテーマを堂々と歌っている歌詞がかっこいいです。

 「Rainy Memories」はウィスパーっぽいコーラスに切ない色気を感じる、ラブソングともとれるような歌詞の曲です。「Change to Chance」では「失っても、胸に残ったものが自分」と歌っていましたが、こちらは過ぎ去ったものへの感傷に思いを馳せています。近しいテーマをこんなにも表情を変えた曲にしてしまう制作陣と、DRAMATIC STARSの表現力に驚かされます。

 楽曲キーワード:平成J-POP、(Re)スタート、王道

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GROWING SIGN@L 15 Take a StuMp!

歌:315 ALLSTARS

Take a StuMp!
作詞:松井洋平、作曲:志村真白 編曲:光増ハジメ

Take a StuMp!

Take a StuMp!

  • 315 ALLSTARS
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

歌:315 STARS/天ヶ瀬冬馬(CV.寺島拓篤)、天道輝(CV.仲村宗悟)、天峰秀(CV.伊瀬結陸)

True Horizon 
作詞:松井洋平、作曲・編曲:原田篤Arte Refact

True Horizon

True Horizon

歌:315 STARS/齋藤孝司(CV.立木文彦

DRIVE A LIVE
作詞・作曲:BNSI(柿埜嘉奈子)、編曲:滝澤俊輔[TRYTONELABO]

DRIVE A LIVE

DRIVE A LIVE

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 新全体曲と、サイスタの1章のストーリー完結に合わせた曲と、エイプリルフール企画で315プロの社長がアイドルデビューした際に披露された「DRIVE A LIVE」の立木文彦さんバージョンです。

 新全体曲「Take a StuMp!」は、315プロのアイドルがユニットを他己紹介していく楽しい曲です。ユニット名のコール&レスポンスが楽しい!全体曲に共通している、アイドルを取り巻く人々への目線が確かに言葉にされています。

君が言ってくれたあの言葉
差し出してくれたその手が
今日という日を作ってくれたんだ

315 ALLSTARS Take a StuMp! 歌詞 - 歌ネット

特にこの歌詞が好きで、アイドルからプロデューサー・ファンの目線でもあるし、315プロのアイドルの存在に助けられてきた現実にいるユーザーからアイドルへの目線でもあります。

 「True Horizon」は、メッセージ性が今までの曲以上にものすごく強く、歌詞を見ているだけで胸がいっぱいになります。「まだ知らないこと」へ向かってチャレンジしていくことをわくわくするサウンドで描いていて、アイドルを応援することの原体験をもう一度感じるような曲です。

 社長版「DRIVE A LIVE」はいわばネタではあるのですが、耳なじみのある曲が立木文彦さんの熱い・厚い歌唱でパワフルに、パッショナブルに歌われるのは元気が出ます。

 楽曲キーワード:主題歌、大人数、ワクワクした気持ち、運命力

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W - GROWING SIGN@L 16 W

歌:W/蒼井悠介(CV.菊池勇成)、蒼井享介(CV.山谷祥生

VIVA!!ファミリーリズム
作詞:結城アイラ、作曲・編曲:鈴木裕哉・藤原彩豊

VIVA!!ファミリーリズム

VIVA!!ファミリーリズム

  • W
  • ポップ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

Watchword
作詞: 結城アイラ、作曲:信政誠、編曲:河合英嗣

Watchword

Watchword

  • W
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 W(ダブル)は、元々サッカー選手として活躍していた双子によるユニットで、サッカーから連想されるダンサブルさ、電子音楽の要素を持つ楽曲が特徴的です。また、2人ユニットのうち双子という唯一無二の結びつきを歌うこともあります。

 「VIVA!!ファミリーリズム」は、2人が体操のお兄さんのオファーを受けた時の曲という設定で、体操のリズムをとるコーラスがかわいいです。サッカーからの連想なのか、一緒に声を出して応援できるようなフレーズがたくさんあります。

 「WatchWord」は、感傷的なメロディに乗せて2人の絆を明るく歌うボーカルに泣けてしまう曲。タイトルの和訳は「合言葉、スローガン」です。

そうさ キミと生まれた瞬間(とき)から
色鮮やかな虹が咲いた

W Watchword 歌詞 - 歌ネット

双子という関係の相手をこんな言葉で表現するの、すごすぎる。

 楽曲キーワード:コール&レスポンス、アップテンポ、電子音楽

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Beit - GROWING SIGN@L 17 Beit

歌:Beit/鷹城恭二(CV.梅原裕一郎)、ピエール(CV.堀江瞬)、渡辺みのり(CV.高塚智人

Platinum MASK
作詞:真崎エリカ、作曲・編曲:桑原佑介

Platinum MASK

Platinum MASK

  • Beit
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

MIRROR of TRUTH
作詞:真崎エリカ、作曲:濱田幹浩、編曲:神谷礼

MIRROR of TRUTH

MIRROR of TRUTH

  • Beit
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 Beit(バイト)はその名の通りアルバイト仲間だった(職業はバラバラですが)3人によるユニットです。ユニットのモチーフは雪の結晶と王子で、楽曲もまさにアイドルといった王道な曲を連発しています。そしてまた、という感じですが、GS17はめちゃくちゃ平成アイドル感が強いです。今更だけどこのCDシリーズは平成ファン(?)の人におすすめかもしれない。

 「Platinum MASK」は、氷の城がイメージされるような、凍てついてクール、ちょっとホラーっぽい(嵐の「Monster」的な)曲。ストーリー仕立て×「王」な感じの歌詞も、モーニング娘。気まぐれプリンセス」くらいのポップソングの中の遊びという感じがする。メンバーの年齢差からくる声のバリエーションも豊かかつバランスがいいです。

 そして「MIRROR of TRUTH」は、個人的にいい意味で問題作と思っているほど平成な曲。サウンドメイクが近いというより完全に雰囲気ですが「truth」「Believe」とかの嵐っぽさがあります。

Let me know 見せてくれ
運命を変えてくれ
今がすべて覆ってしまいそうな Truth

Beit MIRROR of TRUTH 歌詞 - 歌ネット

鏡はいらない 君と僕がいれば
頷いて消えた Phantom…

Beit MIRROR of TRUTH 歌詞 - 歌ネット

平成すぎるって!!!「Platinum MASK」もですが、「君」と「僕」の関係性が中間項を挟むことなく何かしらのストーリーに仕立て上げられている感じの歌詞が、とてもそれっぽいです。本人映像じゃないチープなカラオケ映像がイメージできるような感じ。そういうラインを声優が歌唱するキャラクターソングでなぞりなおすという試みは面白いと感じます。

 楽曲キーワード:平成J-POP、王道、冬のイメージ

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High×Joker - GROWING SIGN@L 18 High×Joker

歌:High×Joker/秋山隼人(CV.千葉翔也)冬美旬(CV.永塚拓馬)、榊夏来(CV.渡辺紘)、若里春名(CV.白井悠介)伊瀬谷四季(CV.野上翔

JOYFUL HEART MAKER
作詞:結城アイラ、作曲・編曲:神田ジョン

JOYFUL HEART MAKER

JOYFUL HEART MAKER

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Toward Pole Star
作詞:結城アイラ、作曲・編曲:志村真白

Toward Pole Star

Toward Pole Star

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 High×Joker(ハイジョーカー)は、同じ高校の軽音部に所属するバンドによるアイドルです。実はSideMには高校生のみのユニットはあまりいなくて、特に高校生らしいフレッシュさや青春といったイメージはHigh×Jokerがわかりやすいです。

 「JOYFUL HEART MAKER」はかなりアップテンポでエネルギッシュかつ、クールな印象もあるテクニカルな曲です。所々入るスラップベースやハモリがかっこいい。音楽に導かれて駆け出してしまうような勢いとスタイリッシュさどちらも備えていて、オープニング曲っぽいです。

走って、走って、燃え尽きていい
夢がオレたちを呼んでる限り
サイコーのサウンドを!

High×Joker JOYFUL HEART MAKER 歌詞 - 歌ネット

 「Toward Pole Star」は、ピアノとクワイアっぽいコーラスがリードする、照れくさくなるくらいのさわやかな曲。ファルセットと丁寧な歌い方が綺麗です。このユニットもアイドルを始める前から関係があったメンバー同士なので、絆を歌う歌詞がハマりますし、胸が熱くなります。サビで入る管楽器の音も吹奏楽部っぽさがあり、ユースな雰囲気があります。

 楽曲キーワード:青春、バンドサウンド、フレッシュ

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おわりに

 ここまで20000字超かかっているようです。全部読んでくれたキミ、すごすぎるゼ!(ホビーアニメ)GROWING ST@RSという素晴らしいCDシリーズを通して、SideMの音楽、そしてアイドルマスターSideMを知っていただけたら嬉しいです。なによりここで紹介した以上にたくさんの楽曲がまだまだあります!

open.spotify.com

315プロがあなたの生活とともにありますように!

試験に出ない「女性向け」シチュエーションボイスの楽しみ方

しれっと嘘をつくたびに死んでいった
誰もかもを認めてく偽りなど
君が壊れるために生きなくていいよ
点滅してる 幽かな光を掴み

Dancing on the edge

Dancing on the edge

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 「Dancing of the edge」は、『CARNELIAN BLOOD』というシチュエーションCDシリーズに登場するバンドが歌っている曲で、シチュエーションCDというのはものすごくざっくり言うと作品の一人称視点を担うキャラクターに対してキャラクターが語りかける設定の音声のことだ。その一人称視点を担うキャラクター(相対するキャラクターのようにボイスは実装されていないが、作中でアクションすると語りかけをするキャラクターは反応を返す)にリスナーが感情移入する、あるいはまるで自分に話しかけられているような体で作品を聴くという楽しみ方が広く想定されている。一人称視点を担うキャラクターのことを着ぐるみのガワだと思うとイメージしやすいかもしれない。

 で、この『CARNELIAN BLOOD』という作品でのシチュエーション音声パートは、ものすごくざっくり言うと一人称視点を担うキャラクター=ヒロインが5人のバンドメンバー(全員が兄弟)の目的のために軟禁されるというストーリーである。その作風はこのブランドの特徴でもあるんだけど、そういう加害者をやりながら「君が壊れるために生きなくていいよ」っていう救世主みたいな歌詞を歌っている。その矛盾が好きだ。

 シチュエーション音声のキャラクターに感情移入して、そのキャラクターになりきったような、自分に話しかけられているような、という楽しみ方に「自分」が介在しているかと言えば、それらは流動的で曖昧だけど、あまり違いはなく、いわゆる自我は抹消して感覚は鋭敏にしているような感覚は共通していると思う。

 で、自分もそういう「自我は抹消、感覚は鋭敏」という楽しみ方をしているけど、自分がシチュエーションCDを聴く時、一人称を担うキャラクターへの感情移入が発生しつつも、「語りかけを行うキャラクターになりたい」という願望が発生していることについて考えた。……わたしはいい声になってメチャクチャしまくり、ステージの上では同じ顔で「君が壊れるために生きなくていいよ」と歌いたい。

 あるいは女性設定の一人称を担うキャラクターへ、男性として感情移入し作品をBLとして楽しんでいることもあるかもしれない。ダ・ヴィンチ・恐山氏が言う「アイドルに強く憧れる小学6年生の仮想人格「里中花蓮」になったつもりでアイドルマスターの音源を聴き、泣く」の感覚に近いと思う。設定などはなく、もっと曖昧でとりあえず「こういうことを言われてる男性がいる」とボヤ〜と妄想するくらいだけで、どちらかというと後述の「神の視点」に近い。

 男性に「なって」楽しんでいるという感覚から連想したのは、中野冬美の「やおい表現と差別――女のためのポルノグラフィーをときほぐす」の中にあった、

女でありながら男を抱きたい(しかも、抱かれる女は見たくないから、やおい少女の欲望は、抱くだけの一方通行である)、感じさせたい、つまりジェンダーの規定にそむいたやおい少女は、男になるしかない。男になって男を抱きたい。やおいはそういうファンタジーである。(『女性ライフサイクル研究』第4号、1994年、p136)

という文章と、溝口彰子の、

彼女たちが挿入者(=「攻」)のみに感情移入すると語る時、それはすでに、現実においては永遠に挿入される側(=「受」)だという立場を前提としている、ということだ。「攻」が「受」を「女」にする行為に読者がアイデンティファイし、喜びを感じるという時、前提となっているのは、彼女たちは「受」をあらかじめ内面化した存在であるということである。……「受」「攻」にそれぞれアイデンティファイするというふたつのモードに加えて、もうひとつ、物語宇宙の外側に立つ読者としての視点、いわゆる「神の視点」へのアイデンティフィケーションもある。……以上の三つのモードのうち、どれが最も強く働くかは、読者それぞれのファンタジーや物語の内容によって異なる。(溝口彰子『BL進化論 ボーイズラブが社会を動かす』2015年)

という文章だった。自分のシチュエーション音声の楽しみ方は、わたしがBL愛好家だから、「やおい少女」的な感覚が自分にインストールされているからなのかもしれないが、シナリオ通り(?)みている「神の視点」の時もあり、これら楽しみ方は時と場合による。

 あるいは、このようにも考える。「女性向け」と言われるシチュエーション音声作品は、「ドS」的な名目のもとにミソジニーをやっていたりする。そういった問題点を孕むストーリーをなんとか克服するために、ただ享受することを避けたり、家父長制の被害者としての病んだキャラクターを愛するという完全にフィクションを割り切る感覚をやっていたりするのかもしれない。一方これらはすごく自分に都合のいい考え方で、批判的な視点を持つならば、男性であることで得られる特権をファンタジーとして手にするために感情移入し、問題とまったく向き合わないようにしているのかもしれない。

 また、個人的なセクシュアリティとの関係もあるかもしれない。「女」であることや「男」であること(どちらか極端な状態)を求められるのがとにかく嫌だ。それで恋愛フィクションから逃走しているというところもある。逃走の末にシチュエーション音声と相対しているというのも変な話だけど、わたしにとってはシチュエーション音声は恋愛フィクションというより制限された環境でギミックが凝らされた物語を体験する面白さを与えてくれるもの……より、というより拮抗していて、たまに面白さに振り切る、そのギャンブル的瞬間を求めている、という感じだろうか。

 自分の問題のある「恥」の態度をインターネットに晒すだけになったかもしれないけど、わたしはそういう感じで(「女性向け」)シチュエーション音声を楽しんでいます。

まだ透明な俺らの春にだんだん色のせていきます


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川越ボーイズ・シングは変なアニメだ。

立てこもりに巻き込まれたら迷惑系Youtuberが居合わせて現場に出前を注文しまくったり、ライバル校の曲がマキタスポーツが作詞した「醤油を煮しめたようなドブの底から空を見上げちまった コンビニに公共料金を払いに来ちまった」という歌詞だったりする。

でも、歌のパワーを信じているし、歌のパワーで人が変わるアニメだ。

先週放送された9話が特にそうだったのと、まだ視聴できていないけど10話もそういう回だったようだし、

思い返せば1話で3人が「On the Set」を歌った時からずっとそうだった。

そう考えるようになったのは、作品のプロデューサー・YUKI KANESAKAさんのインタビューで、

完璧にすることって、現代の社会では比較的簡単なことだと思うんです。だけど、そこに非完璧なものを残すことって、すごく繊細で大切な作業だと思っていて。「ピッチは完璧じゃないけれど、こっちのテイクのほうが惹かれるよね」とか、そういった感覚を大切に制作していきました。

と語られていて、その後に9話を見たら、見え方が大きく変わったからだ。

9話は、自称父親がIT系の社長で、金持ちであることを鼻にかけていた、目立ちたがりの「IT」が、実は父親は炎上系Youtuberだと発覚、自宅が視聴者に特定されて凸られるようになってまともな生活が送れなくなってしまい、夜逃げすることになるのをクワイア部で引き留めようとするという回だった。立てこもり現場に出前を注文しまくっていた8話から急にシリアスになるし、作画(武内宣之さん!)が異常によく、それも含めて「変だな~」と思っていたんだけど、YUKI KANESAKAさんの言葉がまなざしを変えた。

ITは同じクワイア部の「パーフェクトガイ」の「えいちゃん」を勝手にライバル視していて、どうやったら自分が目立てるのかいつも歌の中で張り合って、入部当初はうまくいっていなかった。本当はギターを弾いたりDTMをするのが好きなようだけど、それを表に出すことはあまりしていない。同じ時期に入部した「オトメ」が、「男らしさ」をモットーとする父親や体育教師に筋トレを強いられてきたけど、本当は歌うことが好きな自分を解放するのを見て、「これが本当の僕だ!」と部員の前で自作の曲を披露する。


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9話では、ITはずっと元気がない。夜逃げをすると父親に言われた当日、校門の前で足を止めていると、顧問の春男に見つかり、半ば無理矢理クワイア部の練習に参加させられる。うまく歌えなかったけど、誰にも何も告げずに最後の時間を過ごして、自宅で荷物を積んだ車に乗ると、忘れ物を届けに来た春男と同じく顧問のリカ先生と鉢合わせる。春男は普段すごく非常識な性格をしているのに、ITの今日の歌声について、いつも通りの表情で優しいアドバイスをする。それを聞いたITは、初めて「もう練習には行けません。引っ越すんで」と告げる。

リカ先生からの連絡を受けて部員が集合してITを引き留めようとするが、父親の「別れは辛えよなあ。でも『さよならだけが人生だ』って誰かが言ってたぞ。仕方ないこともある」という言葉にキレたITは、自ら車を出すよう言って去ってしまう。オトメが車を追いかけるけど、どうしようもない。途方に暮れる部員に春男が「お願い」をする。

車中のITに、春男からテレビ電話がかかってくる。ITへの激励の言葉でいっぱいになった黒板が映り、春男が「お父さん、我々の歌を聴いてください!ITくん、歌おう!」と声をかけ、ITが2話で披露した自作の曲の2番をみんなで歌う。

僕のついてきた嘘が 君とさよならさせる
グッバイより再会までの約束に
ハロー グッバイ 友情はフォーエバ
会いたいよ そういつまでも思いは消えない
友と共にソウルはここに
あり続ける グッドラック

その歌声を耳にしたITは、自分と部員たちが壇上にいるような感覚に陥る。

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ITはみんなと歌声を重ねる。

歌い終えると春男から「ITくんがいないと楽譜に穴が……」とか言葉をかけられるんだけど、部員たちはこれが別れであることをわかっているから、「絶対電話してねー!」「また歌おうな」「また一緒に歌おうね。約束だよ!」と言う。不意にネットワーク状態が不安定になって電話がブツっと切れてしまい、涙が落ちた画面にエラーメッセージが表示される。

「……快人」
「ん」
「俺いい加減NewTuber辞めるわ」
「……まじで?」
「おう」
「働くの!?」
「いやこれからは、Vtuberやる」
「……変わんねえじゃぁん」

歌のパワーで離れていても同じステージの上に立っている感覚を起こせるし、起こしたし、ITにとってはそれが本当の自分が好きだった音楽と作った曲で、というのが、歌のパワーを信じて、立証していて、すごい。

部員たちが歌った「いつかのアイムソーリー2」って、1番は「君の肩から伸びた毛が 僕をどぎまぎさせる」とかいうめちゃくちゃヘンテコな歌詞で、2番もまっすぐすぎてギャグなくらいだけど、それがまさに"「ピッチは完璧じゃないけれど、こっちのテイクのほうが惹かれるよね」とか"の感覚で、めちゃくちゃ泣けてしまう。

……とにかく伝説の回だった。今更すべての回が何倍も魅力的にうつる。もともとすごく楽しみにしていた作品だったのに、今更すごくおもしろく感じる。終わってほしくないな~。


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祝アニメ化!華Doll*について語るスレ――アイドルは電気羊の夢を見るか?

この記事は推しコンプレゼン2023 Advent Calendar 2023 3日目の記事です。内容に過去のエントリのサルベージを含みます。

 

はじめに

 いつもお世話になっている相互フォロワー兼サーバーの管理者・夜坂さんが主催する推しコンプレゼンアドベントカレンダーに大変面白そうだと思って参加したものの、世はまさに大コンテンツ時代。時にコンテンツを追い、時にコンテンツに追われる現代のオタクはいったい何をプレゼンし、プレゼンされるべきなのでしょうか?

 夜坂さんとわたしとは、夜坂さんが管理者をしている和風ホラー因習村風Firefishサーバー・皆尽村のユーザーという関係があります。このプレゼンを目にする方もきっと皆尽村経由の方が多いことでしょう。皆尽村は「和風ホラー」「因習村」というテーマだけあって、ユーザーの方々も少しダークな雰囲気のある作品が好きな方が多いような気がしています(主観です)。ダークで、今ホットで、わたしが好きなコンテンツ……

つまり、『華Doll*』なんですね!

 

 

作品について

 いきなりですが、『華Doll*』はアニメ化が決定しています。

原作の「CD(あるいはサブスク含む配信)のボイスドラマ+楽曲」という展開よりハードル低く作品に触れられる機会がそう遠くないうちに訪れるということで、今推しコンテンツとしてプレゼンをするのはかなりホットなタイミングなんじゃないかと思います。

 『華Doll*』(読み・ハナドール)は、飽和状態のアイドル業界で発足した、“人間のポテンシャルを最適化させるために身体に特殊な種子を埋め込む手術を施し、適合ののち「開花」することで完璧なアイドルになりえる”という芸術と医療の融合プロジェクト華人形プロジェクト」を取り巻くドラマを中心としたコンテンツです。

 1stシーズンは、このプロジェクトに参加した6人のアイドル候補生(グループ名・Anthos(読み・アントス))が、1年以内の全員「開花」を条件としたデビューを目指して寮生活を送るストーリーで、5枚のボイスドラマ+楽曲のCDが出ています。

 この作品の好きなところは、現実のアイドルカルチャーまでを射程にしたシナリオのハードさ、そしていわゆる「楽曲派」としても楽しめる楽曲のよさです。

 わたしは、この作品のテーマを勝手に「アイドル・ディストピア」だと思っています。ディストピアオルダス・ハクスリーすばらしい新世界』やジョージ・オーウェル1984年』などSF小説にしばしば登場する社会のことで、辞書的な定義は以下のようです。

近未来を舞台に、目に見えない独裁者の支配・怪物的な官僚システム・性愛のコントロールなどを活用しながら、自由の抑圧という主題を批判的に展開する、シニカルな現実批判がベースになった物語。*1

こうして見ると既に芸能界という題材とディストピアは非常に相性がいいように思いますが、「華人形プロジェクト」の概要は以下です。

華人形プロジェクト】は、『完璧』なアイドルをつくりあげることを目的に、天霧プロダクションが取り組んでいるプロジェクト。
大手医療研究所の協力のもと、脳科学インプラント技術などの医療分野、さらに情報管理・解析などのIT技術など様々な分野の最先端技術を駆使し人間の身体自体にアプローチ。通常は抑制されている脳機能のリミッターを外すことにより、人が本来持つ能力を開放していく。
こうして、リミッターを外した結果、高い身体能力を持ち、観客が求めるものを永遠に100%提供できるような存在となることを目指す。

華人形プロジェクト】では、人体に植物の種状の特殊なカプセルを埋め込む。
“種”は身体に働きかけを行い、その人物の持つ潜在能力を極限まで引き出す。
身体に埋め込まれた“種”にはその人物の記憶や遺伝子が記録されていく。
“種”の成長は、主にその人物の感情に左右される。その人物がアイドルとしての活動を行い自分自身が成長すると共に、
またファンからの声援やプラスの感情をもらう事によって成長する。
“種”は、やがて花を咲かせる。開花すると身体のどこかに花の色の模様が現れる。
“種”は、カプセル状態ではどのような花が咲くか不明である。その人物の体内に馴染んだ時点で、ようやく花の種類が判明する。
“種”を埋め込んだ瞬間、副作用として髪色や瞳の色が変わるなど、花の種類に合わせて見た目が変化することもある。
“種”にはGPS機能もついており、一度プロジェクトに参加した人物は、プロジェクトの管理下で生活することとなる。
参加者はプロダクションに併設された寮で暮らし、毎日、脳波測定、健康診断などが行われる。
これらの健康管理は全て、最新技術を搭載したマスコットアンドロイドPLANTs(プランツ)が行う。

ディストピアのにおいがプンプンするぜッーーッ!!

 作中で「華人形プロジェクト」のもとには、最高のアイドルになることを目指す様々なバックグラウンドを持つキャラクターが集まります。そんな「みんなの夢を叶える技術と叡智のプロジェクト」という面はオプティミスティックでしかなく、実際のストーリーでは、手術を行ったとしても肉体に適合するのか、「開花」できるのかというアイドル候補生たちの不安や焦り、徹底的に管理された生活という非人間的な面が強調されて描かれます。

 非常にわかりやすい要素として、ドラマで描かれる彼らの寮生活は、AIを通じて必要なカロリーや栄養素が一元化してシステム化された毎日の食事が「スープとタブレットみたいなもの」であったり(1巻「Birth」)、「華人形プロジェクト」の裏を暴こうとしたゴシップ記者が消されたり(5巻「For…」)、アイドル候補生たちはプロジェクトに関わる大人たちからは「ドール」と呼ばれまるで人間扱いされていない(4巻「Message」)ところは、すごく「らしい」です。

 でも、『華Doll*』が「アイドル・ディストピア」であるのは要素だけではなく、その世界を批判的に語っている点こそだと思います。

 アイドル候補生たちの「開花」のスピードには個人差がある上、そもそも全員の「開花」は約束されていません。自分より先に「開花」していくメンバーが登場すれば、不安、焦り、悔しさ、嫉妬、コンプレックスなどのネガティブで複雑な感情を抱くのは当然です。共同生活なので、自分の本当の気持ちを出せずに我慢してギスギスしたり、逆に感情のぶつけ合いが起きたりします。

 それでも彼らは自分たちのペースで、コミュニケーションを諦めません。少しずつ言葉を重ね、困難を乗り越えようとします。6人の間でペアっぽくなる相手がいる構成になっていますが、そのペアに留まらず全員でコミュニケーションを重ねます。

神よ、変えることのできるものについて、それを変えるだけの勇気をわれらに与えたまえ。変えることのできないものについては、それを受けいれるだけの冷静さを与えたまえ。*2

という神学者ラインホールド・ニーバーの言葉がありますが、まさに6人の生活には、このセレニティ・プレイヤー的精神性があります。

 1stシリーズの後半である4巻「Message」や5巻「For…」では、アイドル候補生たちが大切だと思うもののために、事務所の指示や世間のバッシング(悪いインターネット)に抵抗して行動を起こす規模が大きくなっていきます。たとえ権威の下にある(アイドルになる)ことしかできなくても医療や科学では彼らはコントロールされないことが描写されます。その勇気や熱は、現実のアイドルカルチャーをも射程にした世界への批判です。

 その上で、『華Doll*』はこのように問うています。

自らの人生と引き換えに「華」を得た少年達。
完璧な物など何一つない世界で、未熟な彼らに与えられた「選択」
彼等の行き着く先とは。

『華Doll*』
それは「人間」か、「人形」か。

オタク語彙でいうと、いわゆる曇らせ的な要素や胃が痛くなるような展開がありますが、最終的には「夜明け」なので、そういうのが大好き!という方には非常にオススメです。

 

キャラクターについて

 1stシーズンおよび作品のメインキャラクターのアイドルを紹介します。重大なネタバレにならない範疇で、公式サイト(事務所が出しているパブリックイメージ)以上の情報を含みます。画像の引用はオフィシャルマナーに則ってこちらこちらから引用しています。(いわゆるサザエさん方式ではない作品なので、引用した画像(アニメビジュアル=1stシーズン)と現在の作中の年齢は異なります)

  • 結城 眞紘(ゆうき まひろ)

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赤担当。Anthosのセンター。まじめで一生懸命で、常にポジティブであろうと心がけている。自死遺族。

 

  • 如月 薫(きさらぎ かおる)

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青担当。メンバーにも敬語で接する物腰柔らかで丁寧な性格。世間知らずで天然な一面もある。

 

  • 影河 凌駕(かげかわ りょうが)

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緑担当。最年長。時にしっかり者だったり時におちゃらけていたりと余裕がある兄貴分。「華人形プロジェクト」に疑念を抱いている。

 

  • 清瀬 陽汰(きよせ はるた)

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オレンジ担当。最年少。まっすぐな性格で自分に厳しい努力家だが、向こう見ずに突っ走りがちな一面もある。

 

  • チセ

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黄色担当。マイペースで天真爛漫。メンタルの上下が激しい。センスと感性が抜群。

 

  • 灯堂 理人(とうどう りひと)

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紫担当。毒舌でクール。言葉がきつく他メンバーと衝突しがち。ツンデレ

 

楽曲について

 いわゆる「楽曲派」としても楽しめる、と前述しましたが、そもそも「楽曲派」とは、本来の意味とは異なりますが、“アイドルの特典会やパフォーマンスではなく楽曲に注目し、コアな音楽性を持つものを嗜好する聴き手”のことを言います。ここでは、本来キャラクターソングである彼らの楽曲が、ドラマやキャラクターというバックグラウンドの情報がない状態で聴いても楽曲そのもののよさを楽しめるという意味で使っています。

 フルMVも公開されているA面の曲を紹介します(楽曲もボイスドラマと同じCDで、CD、配信、サブスク展開しています!)。

  • BIRTH

作詞:葉月ゆら、作曲:森慎太郎、編曲:森慎太郎・fazerock、ボーカルディレクション:zakbee

BIRTH

BIRTH

 ダンサブルで低音のアタックが強くてキャッチーで、まさに「はじまり」にふさわしい主題歌感と、わくわくした想像力で体が動かされます。

 

  • Juliet

作詞・作曲:INN、編曲:fazerock、ボーカルディレクション:zakbee

Juliet

Juliet

  • provided courtesy of iTunes

 繊細で美麗でやわらかな雰囲気の中にBメロからの展開と三連符が胸を打つようなJuke/Footwork。

 

  • S.T.O.P

作詞・作曲:中野晶弘、編曲:fazerock、ボーカルディレクション:zakbee

S.T.O.P

S.T.O.P

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 808のハイハットが鋭く、不穏でハードな音とラップや台詞っぽいボーカルが重なるさまは官能的ですらある。

 

  • Me Against Myself

作詞・作曲:chefoba、編曲:fazerock、ボーカルディレクション:zakbee

Me Against Myself

Me Against Myself

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 内向的な踊り、ラブソングにも取れる歌詞が切ないレゲトン

 

  • I know,Who I am

作詞・作曲・編曲:Leeep、ボーカルディレクション:zakbee

I know,Who I am

I know,Who I am

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 トラックもボーカルも世界に立ち向かうような力強さのある曲。

 楽曲だけ楽しみ、作中の彼らのファンと同じ楽しみ方をする、というのもおもしろいと思います!

 

原作リンク

 現在原作は配信やサブスクでも聞くことができます。

公式YouTubeのリンクはこちら

各種サブスクのリンクは以下です。

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ちょっと、悪い夢を見てただけだから。多分……

 「華人形プロジェクト」のオーディションに合格し、手術を受けたアイドル候補生6人の共同生活がスタートする。一足先に入寮していた眞紘は、個性豊かなメンバーが寮にやってくるのを待つ。

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ねえ、リットーリットーは、どうして僕がそんなに怖いの?

 「開花」した1人目のメンバーの誕生に5人は興味津々。寮ではレッスン漬けの生活が始まり、6人には少しずつ差が生まれていた。

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才能あって、金持ちで、ツテも、コネも、帰る場所もある奴らにはわかんねえよ

 アルバムのリリースイベントを開催することになったAnthos。ファンの前でパフォーマンスが披露できる機会に喜びを見せる6人だが、ライブの後に開かれた記者会見で――。

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今の全部嘘なんだ。本当はそうじゃなくて……、ずるい、どうして僕だけ、なんでいつも、僕ばっかりって、言いそうになったから、だから……

 事務所から全員の外出許可が出され、オフの1日を充実して過ごすAnthos。しかし、街頭ビジョンに自分たちのゴシップニュースが流れていて――。

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ねえ、今からでも遅くないから、やっぱり泣こうよ

 「開花」していない最後の1人であることから焦りとプレッシャーを抱え、レコーディングで失敗してしまったあるメンバー。事務所からAnthosを辞めるよう遠回しに通達され、寮を出ていこうと準備をしている時に凌駕が部屋にやってきて――。

 

おわりに

 『華Doll*』は、現在2ndシーズン、そして活動休止中の「華人形プロジェクト」の先輩ユニット・Loulou*di(読み・ルルディ)のドラマと楽曲が展開されていて、アニメの原作となる1stシーズンの先もストーリーが続いていきます。もしこのプレゼンで興味を持ったら、アニメ情報をチェックしてみたり、楽曲やドラマを聴いてみたり、他のメディアミックスからでも作品に触れてみたりしてくださったら嬉しいです。

 この花が、いつかあなたの生活を彩ることがありますように。

 

関連リンク

『華Doll*』天霧プロダクションOfficial Site

 『華Doll*』公式X

*1:

kotobank.jp

*2:大木英夫『終末論的考察』中央公論社、1970年

11月の音楽

 11月によく聴いた音楽です。

 

 

group_inou「HAPPENING」

HAPPENING

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 group_inouの……新曲!?!?

 group_inouの新曲をリアルタイムで追ってるって2023年の中でも本当にいいことだったかも。

 

Altessimo&彩「組曲 -to All Ages Concerto-」


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 発売前ですが3DCGライブで披露されて、そのアーカイブが1ヶ月あるのでずっと聴いています。以降の文章にはフルのネタバレがあります。

 オーケストレーションに拍子木や和太鼓のリズムと早口の歌詞とコーレスが重なって、転調を20回していて展開も音もすごくにぎやかなのですが、

不意に貴方と仰ぎ見た日 あった空の色のような
継ぎ目ない物語を描きましょう

という、最初のフレーズをもう一度最後に繰り返すのがすごく好きです。

 この曲は11月18日と19日に開催されたSideMの3DCGライブで、Altessimoと彩を含む4ユニットが参加した公演のうちAltessimoと彩のお当番回「harmony cord(共鳴和音)」のテーマ曲で、公演タイトルがラストに回収される展開がぐっとくる。

祈りだけじゃ終わらないんです
ずっと続く夢を寿ぎ
どこまでも流れてく
harmony cord

 公演はクラシックに馴染みのあるAltessimoと伝統的な日本文化に触れてきた彩ということで「伝統」がテーマになっているんですが、現代からみる古典の面白さの感覚を素直に表した歌詞が音楽讃歌のようになっていて泣けます(「真髄は相容れない音楽なんてこの世にない」「思うよりも近くにいる どんなメロとだって僕らは」「折衷じゃなくそのままでいいんです」)。

 

Legenders&C.FIRST「Secret Light」


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 同様にSideMの3DCGライブでフルが披露された、LegendersとC.FIRSTのお当番回「DIMENSION ARROW」のテーマ曲です。

 Legendersのソフィスティケイテッドで都会的な音と、C.FIRSTのフレッシュなEDM感のイメージが合わさるとセンチメンタルな四つ打ちになるんだ!という嬉しさと納得感。歌詞がとにかくすごいと思っていて、

そう、いつか 旅の終わり 君という Star Light

というサビ前のフレーズにまず驚きました。「旅の先」とかではなく「旅の終わり」という言葉が使われていることで、この「旅」の纏うイメージが変わります。例えば「旅の先」だったら未知のワクワク感があってポジティブな要素も含まれていそうですが、「旅の終わり」からは、時間への感傷や孤独が連想され、ポジティブとは言いがたいです。弱さを見せる言葉選びにドキッとしてしまいます。

そう 流れる星は僕らだ 刹那を燃やして輝く
存在の意味を教えてくれた人
どうか君が今でも僕を待ってますように

C.FIRSTが担当するパートのこのフレーズも強烈です。アイドルにこれを歌われたらたまらなくて感情がめちゃくちゃになってしまう。

一度限りの日々
Redoなんかできないから
眠れないまま迎えたあの日を
忘れない 忘れない So Higher Dream

ただ、その中にある強さも確かに描いています。

 

黒鉄たま(秋奈)、白銀煌(小宮有紗)「探す獣」

探す獣

探す獣

  • 電音部,ウ山あまね, 黒鉄たま (CV: 秋奈)、白金 煌 (CV: 小宮有紗)
  • エレクトロニック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 ウ山あまねさんのワークは、音楽というより音として耳に入ってくる音というか、例えば「メロディがいい」とか「コードが面白い」みたいなリスニングの姿勢とは違う感性にヒットする音が多用されていると日々感じているのですが、その感覚とは(個人的な感覚では)近いところにはないロマンティックなムードがなぜか立ち上がってくるところが大好きで、わたしはそれが湯気のイメージと結びついています(『ムームート』のビジュアルに影響を受けすぎているだけかも)。「探す獣」は、そのゆらゆらしてつかめないロマンティックなところはそのままにダンサブルで、かつカワイイ系の声とのバランスが取れたポップさがあってすごく好きです。もしかしたら電音部の楽曲で一番好きかもしれない……。

 

木村龍濱健人)「SPARKLE SIGN

SPARKLE SIGN

SPARKLE SIGN

  • 木村 龍 (CV.濱 健人)
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 とにかく歌詞がすごすぎる。まず「晴れた空が少し不安で」っていう歌い出しがすごい。この明るい曲調で、晴れた空に不安というイメージを重ねるのがすごい。

煌めく
傷のSIREN 軌跡(あと)になって 夢を手繰った
頑張れるって思うたびに SPARKLE

「煌めく」の次に来るのが「傷」ってすごすぎる。ふつう、光とか星とかポジティブなイメージと一緒に用いられるはずだし、その後の「SIREN」も聴覚のイメージが先に来るのに「軌跡(あと)になって」という視覚のイメージが続く。小さな裏切りが続いて全部すごく心に残る。ネガティブな経験や思いをポジティブに変えていく明るさを、こういう言葉選びで表現するのは本当にすごい。

傷を知ってたぶんよかった
涙にほら寄り添えるから

このフレーズも前半で裏切って後半はストレートに伝えてきて、すごく印象的だ。

 

彩「愛笑華!」

愛笑華!

愛笑華!

  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 そう、そう、ほんとにそう!

 

death's dynamic shroud『Transcendence Bot

 アルバムを3つ出したdeath's dynamic shroudですが(すごい同人作家?)このアルバムが一番好きでした。

 

NTsKi『Calla』

Calla Lily

Calla Lily

 母を亡くした後、その思い出や愛について歌っているということで、とてもパーソナルな思いの強さは曲からも感じられるし、ただ美しいというには、ちょっとまだ言葉を持ち合わせていない。

 

 11月によく聴いた音楽でした。